1322:向こうから来てもらおう。
そんなこんなで訓練を済ませて、お片付けをしている所にドアの音が。
おや、ライサさんか。
「失礼します」
「何かありましたか?」
「先ほど戻って来る時に、お願いしておきましたの」
あぁ、前を通るついでに呼んでおいてくれたのか。
そういえばいつもの筆記用具も持ってきてるな。
基本装備みたいなイメージが付いちゃっててスルーしてたけど。
「実演しないとはいえ、受付のカウンターで伸ばして見せるのも避けたいかと思いまして」
「あー、そうだね。ありがとう」
言われてみれば確かに。
口吻をって書いてあるんだから、見せてみる事にはなってただろうな。
それにしても、こっちが終わるタイミングがよく解った……って思ったけど、簡単か。
休憩なのかサボってるのかは知らないけど、大抵は誰かしらに見られてるもんね。
それじゃ、お仕事の邪魔になるのも悪いしさっさと済ませよう。
いや、これもお仕事の一部ではあるんだろうけど。
というか普段、受付カウンターで何してるのか知らないけど。
「口で説明するよりも早いと思うんで、とりあえずパネルを渡しますね」
「はい」
【お人形遊び】のパネルを開いて、にゅーっと伸ばして、と。
「大分ダメなやつなんで、そのつもりでお願いします」
差し出された手にパネルを乗せつつ、一応事前に逃げを打っておく。
普通にっていうか全力で酷い魔法?だしね。
「なるほど……」
うん、流石のライサさんでもこれには引き気味だな。
というか絶賛されたらそれはそれで怖いけど。
「口吻ですが、よろしければ少し見せていただいても?」
「あ、はい」
限界の手前までにょろりと伸ばしてから、ライサさんから見やすい様に顔の近くへ。
あんまり接近し過ぎるとお互いに危ないから、加減が難しいところだな。
ライサさんが色々と角度を変えながら、全力で観察してくる。
いつもの事な気はするけど、やる気が有り過ぎてちょっと怖いぞ。
というかあんなの読んだ直後に、よくその生き物にここまで接近出来るな。
まぁ前向きに、信用されてるって事だと思っておくか。
いや、そもそも近づいたら危ない生き物だっていうのは最初からか。
根元の動きのせいでぶつかったりしない様に、喋る前に先の方を摘まんで、と。
「割と自由に動かせますし、魔力で出来てるのか本体と違ってかなり強いみたいです」
先を持ったまま管をうねうね動かしてから、両手に管を巻き付けて力いっぱい引っ張ってみせる。
……管は大丈夫だけど、力いっぱい過ぎて手がちょっと痛かった。
「ありがとうございました」
唐突に懐から出てきた金平糖をぷすっと刺してからそのまま受け取ってみたり、小さい水筒に入れられたリンゴジュースを吸わされたりして、針を一通り確認したライサさんに頭を下げられる。
「あ、いえ。こちらこそ」
色々まとめてもらってる立場だしなぁ。
ん、いや、別にまとめなくてもこっちは困らないのか?
まぁ良いや。
……っていうかライサさん、ここぞとばかりにおやつを与えてきたな。
別に小石とか普通の水とかでも良かったでしょうに。
まぁ困りはしないから別に良いけどさ。




