1317:副産物を出してみよう。
「……とりあえず、訓練の続きしよっか」
「報告しなくてもよろしいのですか?」
「いや、どうせ実践は出来ないんだからあっちでパネル見せれば良いかなーって」
「あぁ、なるほど。それもそうですわね」
流石に死人が出るのが前提のスキルはちょっとなぁ。
まぁ本音は後回しにしておきたいってだけなんだけどね。
というか実際のとこ、迂闊に今のタイミングで報告しに行ったりしたら、祝福持ちの人が「やってもいいですよー」とか言い出す可能性があるからね。
そういう危険はなるべく回避していきたい。
どうせ夜にエリちゃんあたりにやってみる羽目になるんだろうから、あんまり変わらない気もするけど。
「ところで、少し気になったのですが」
「ん?」
今のタイミングで言うって事は【お人形遊び】関連の話なんだろうけど、私としてはノータッチの方針で行きたい所だよ?
まぁ聞くけどさ。
「先ほどの魔法に『麻酔効果の有る唾液を注入する』と有りましたが、通常時にも生成出来る様になったという事なのでしょうか?」
「……なのかな?」
その魔法特有の効果ってだけな気もするけど、どうなんだろうか。
というか【妖精魔法】に入ってはいるけど、あれは魔法と言っていいのか?
……まぁうん、それは置いておこう。
「でも、そんなの出すって言ってもなぁ」
注入するって事は、出るとしたら舌の内側にだろうけど、試すにしてもどう……
「……出ちゃった」
「おぉ、流石ですわ」
どうすればいいんだかとか思いながら舌を意識してたら、ぷくーっと舌が少し膨らんでしまった。
下手に圧迫して口の中に出たりしたらヤバそうだから、まともに喋れないし。
なんでこう、【妖精】特有の変な事だけは簡単に成功しちゃうんだよ。
「では早速、試してみるとしましょう」
当然の様に腕を差し出してくるんじゃないよ。
そりゃこの場にはカトリーヌさんしか居ないけどさ。
「いや、でも訓練も有るし……」
ええい、喋りづらい。
ちょっと一旦針を出して、中身を地面に捨てておこう。
「おや?」
「ん?」
ぴゅーっと吹いたものを見て、カトリーヌさんが何か気になったらしい。
「どうやら、揮発性の高い液体の様ですわね」
「……あー、消えてるねぇ」
いくら出した量が少ないにしても、普通に乾いたにしては早過ぎる。
湿った土の色がすぐに元通りになって、吐き出した痕跡が完全に消えちゃったな。
まぁ別に消えてくれて良いというか、酸とか火とかみたいに痕跡が消えないせいで後始末に苦労するよりは良いんだけど。
「いや、何してんの」
「確認は大事だと思いますので」
徐に地面に伏せて、近くをすんすん嗅ぎ始めるんじゃないよ。
もう何も残ってないよ。
「……なるほど」
「ん?」
「散らさぬ様にして可能な限り吸引してみましたが、【妖精】に対しても多少の効果は有る様ですわ」
「……そうなんだ」
二の腕をむにーっと摘まみながら、笑顔で告げてくる。
妙に緩やかというか滑らかな動きをすると思ったら、出来るだけ風を起こさない様にしてたのか……
「あんまり痛くなくなってる?」
「僅かに、といったところでしょうか。多少の間が有りましたから、大半は空気中に散っていったのかもしれません」
無駄に痛みに詳しいカトリーヌさんが『僅かに』って言うんだから、多分本当に誤差ってくらいの効き目なんだろうな。
……ん?
「この散ったやつって、普通の人が吸ったらマズいかな?」
「屋外での事ですので、流石に問題は無いと思いますが……」
「……まぁとりあえず油断せずに、上に飛ばしてごまかしておこう」
鱗粉があんな酷い効果なんだから、薄ければ大丈夫だろうで済まさない方が良さそうだし。
もし何か事故でもあったら、色々と困るもんね。
捨てた辺りに両手を置いて、真上に向けてぶおーっと送風。
見えないからちゃんと飛んで行ってるかも判らないけど、まぁ気分の問題だと思おう。
……でもこれ、もし空気より重かったら結局戻ってくるんだよね。
まぁそうだとしても、何もやらないよりはマシか。
あ、でも粉の時の特性を考えれば、ある程度離れたら無効化出来る可能性も有りそうだな。
後でジェイさんの所に行ってみた方が良いかもしれない。




