1318:実験を希望されよう。
「では改めまして」
「いややるとは言ってないっていうか、ちゃんと麻酔だって事は確認できたから良いじゃない」
言ってないというか、逆にまだ訓練もあるんだしやめとこうって言おうとしてたよ。
どうせカトリーヌさんの事だから、あんな発音でもちゃんと理解してたでしょ。
「効果のほどを、きちんと知っておくのも大事な事かと思いますわ」
「いや、別に今すぐに知る必要も無いし…… まぁ良いや」
効果を調整する時の為に、基準が解ってた方が良いのは確かなんだから諦めよう。
まぁそれは後でジェイさんに手伝ってもらえば済む話なんだけど、どうこう言ってる間にさっさと済ませた方が早いし。
「ありがとうございます。では、こちらへお願いします」
「ん? ……あぁ」
畳んだ白い布をスッと差し出してくるから何かと思ったら、漫画とかドラマで見る用法か。
あれって本当は無理らしいけど、まぁそれはどうでも良いな。
「えーと…… さっきくらいの量で良いのかな?」
「と、思いますわ。あぁ、その前にお願いが有るのですが」
「ん?」
「昏睡や仮死の様な状態に陥った場合は、時間の浪費を防ぐ為に止めを刺していただけると助かります」
「……えー」
「治療で覚醒する事が出来たとしても、訓練の出来るコンディションに戻すには相当な時間が必要かと思われますので」
いや、言ってる事は解るし、どうせ【妖精】はデスペナ無いんだから問題は無いんだろうけどさ。
一応あんまりやりたくは無いんだぞ。
んもーとか言いながらコキャッてやってた気もするけど。
「まぁうん、仕方ないか……」
そういう事になるから、ここでやらずにジェイさんに任せたいんだよ。
まぁやるって言った以上は、諦めるしかないんだけど。
「んー……」
このくらいかな?
舌に溜めてからにゅーっと針を伸ばして、カトリーヌさんが持ってる布の上に…… 乗せた所でぽふっと畳んで、針が挟まれる形になった。
この方が散り辛いとかなのかな?
布の中にじわーっと染み込ませて隙間からすぽっと針を抜くと、すぐにぽふっと顔に押し付けていった。
……やる前にもうちょっと気にするべきだった気もするけど、自分が吐き出した物を顔に当てて深呼吸されるって、大分恥ずかしいな。
「……ぃいぉうぁぃ……えぃあぁ……」
「ごめん全然解んない」
すぅーっと思いっきり吸い込んで、見るからに鈍った動きとまったく呂律の回ってない状態で何かを言ってくるカトリーヌさん。
……「一度くらいでしたら」、かな?
っていうか【浮遊】も安定してないのか、ゆらゆらしながら回転してるぞ。
「では……」
あ、続行するんだ……
もうどう見ても効いてるんだから、別に良くない?
あ、頑張ってたっぽいけど二回目の半分くらいで落ちたらしい。
半端な高さを飛んでる状態のままだったから、物理的にも落ちていったな。
……あ、まっすぐ落ちていってモロに頭から着地した。
あれだと私が何かする必要もなさそうだな……
あ、さっきふらふら回って逆さまになってたって、もしかしてわざとやってたのかな?
仕方ないけどやだなーって雰囲気を露骨に出してたから、手を下さなくて済む様に気を利かせてくれたのかもしれない。
でもそれならもっと気を利かせて、やらないって選択肢を選んでほしかったんだけど。
いや、それが無理だっていうのは解ってるけどさ。
おっと、消えたな。
戻ってくるまで、普通の訓練の続き……はなんとなく足並みを揃えたいし、針を動かす練習でもして待つとしよう。
別に上手になりたい訳じゃないけど、なんかこれも【妖精魔法】の経験値になりそうだし。
……というかあの人、「陥った場合は」って言ってたけど、最初から陥るまでやるつもりだったんじゃないか。
そもそも訓練出来なくなるって言うなら、昏睡まで行かない時も同じ事だし。




