1315:限界まで伸ばしてみよう。
準備OKって事で、先端を摘まんでゆっくりにゅるーっと引っ張ってもらう。
……おお、伸びる伸びる。
「長くない……?」
「長いですわねぇ」
特に抵抗も無いまま、するするするする伸びていく。
これもう二メートル超えたんじゃない?
垂らしたら足より下まで行きそうだし。
「無制限という事は無いと思いますが……っと?」
「んぁ、終わりっぽいね。……長っ」
舌を引っ張られたままだと喋りづらいので、ちょっと前に出てから喋る。
これ、大体三メートルくらいあるのかな?
いくら何でも伸びすぎでしょうに。
「随分伸びるものですわねぇ」
「本当にね……」
戻ってきたカトリーヌさんから受け取って、半分くらい吸い込んでから観察してみる。
流石に先端を手に持ってても足の辺りまで行くような長さは邪魔なだけ…… というか、伸ばしきったままだと変なとこに引っかかったりした時が怖い。
「んー……? いや、これ凄い頑丈だな……」
痛かったり危なそうなら止めておこうと思いつつ柔らかい管の部分を両手で引っ張り伸ばしてみたけど、細いしぴったり百八十度で畳めるくらい柔らかい癖に全く千切れたりする気配が無い。
いや千切れられたら困るんだけど。
手にくるくる巻き付けてから思いっきり引き延ばしてもみたけど、少なくとも【妖精】の腕力じゃどうにもならなそうだ。
……試しにちょっと前歯で噛んでみても、ぐにぐになるだけで痛くもなんともないし、にゅるっと出して噛んだ所を見ても傷一つ見当たらない。
この謎パーツ、【妖精】本体よりよっぽど強いな……
いや、一応その本体の一部だけどさ。
というか刺さる時も魔法攻撃なんだし、【魔力武具】とかと同じ様な、魔力で生成された何かだと思った方が良いのかな。
あっちは出した後は一応物理扱いだけど。
「ところで、引き戻せるという事は普通に伸ばす事も?」
「ん? あー、出来るみたい」
「普通に」ってのは、最初みたいに飛び出す動きじゃなくてって事か。
引っ張るのとは微妙に違う力の入れ方で、にゅるりと伸ばす事が出来た。
翅とかと同じで普通の体には無い筋肉……?を使うから、慣れないとちょっと難しいな。
別にこんなのに慣れたくはないけど。
……ん?
今なんかぴくって……
「おや?」
「なんかこれ、自由に動かせるっぽい……」
もしやと思って舌先に集中して色々力を入れてみたら、本当に動かせてしまった。
まっすぐ前に伸ばしてみたり途中で九十度曲げてみたり、動かしたところに当たりに来たカトリーヌさんを回避してみたり。
一般的な妖精のイメージからどんどん遠い謎の生き物になっていく……
いや、割と初期からだし、これが飛び出した時点で一アウト追加されてるけどさ。
「こうすると、蝶の様になれるのでは?」
「いや、なってもなぁ……」
カトリーヌさんが口の前で指をくるくるする動きの通りに、一応やってはみたけどさ。
なってどうするというのか。
……まぁまっすぐ伸ばして蚊みたいとか言われるよりはマシか。
先端の針の事を考えると、どっちかというと蚊の方に近い気もするけど。




