1308:膨れてみせよう。
「それじゃ、もう一つの方を」
「はい」
言わなくても効果は知ってくれてるからか、ライサさんが少し後ろに下がってくれた。
一応十分なスペースは有ったけど、用心するに越した事はないよね。
えーと……
うん、カトリーヌさんも離れてくれてるな。
それじゃ、【妖精山脈】っと。
……しかしこれ、こうも無防備な時間が有るのはどうなんだろうなぁ。
いや、【妖精】なんて常時無防備みたいなものだけどさ。
「っと。こんな感じですね」
「おお……」
……なんかすっごい嬉しそうだけど、ライサさん的には小っちゃいままの方が良いんじゃないのかな?
あぁ、小さいかどうか以上に【妖精】だって事の方が重要なのか。
「なるほど…… 耐久力は通常時と同じなのですね?」
「そうですね。同じというか、的が大きくなる分余計に脆くなってる気もしますけど」
薄めて広げた様なものだから、面積当たりの耐久力って意味では完全に弱体化してるしね。
「こちらは【神隠し】の様に調整する事も出来るのでしょうか?」
「え? あぁ、そういえば試してなかった」
普通の大きさになれる魔法みたいな認識だったからなぁ。
というか、調整出来て何か意味が有るのかって話だし。
「それじゃ、ちょっと試して…… 出来ましたね」
一度戻る必要が有るかと思ったけど、試しに小さくなる事をイメージしてみたら周りがどんどん大きくなっていった。
ライサさんと同じくらいの身長になってるし、三十センチ近く縮んでるのかな?
まぁ結果的に高さが同じってだけで、縮尺自体はこっちが二割引き……までは行かないけどそんなところだから、横に並んだらちょっと違和感が有るだろうな。
「可能……と。制限などは有るのでしょうか?」
「あ、はい。やってみます」
「よろしくお願いします」
顔を上げたライサさんに、更なる確認事項を追加された。
うん、出来るだけ情報は埋めるべきだよね。
さっきと同じ様に、身体の魔力を巡らせながら念じて体を縮ませていく。
うーん、変な感じ……だけど、多分アヤメさん達もこんな感覚を味わってるんだろうな。
ん、止まったかな。
えーと……?
「おおよそ二倍、といったところでしょうか?」
「……いつの間に」
唐突なカトリーヌさんの声に下を見ると、足下の位置を合わせて脚に寄り添うカトリーヌさんの姿が。
あんまり近づいたら危ないよ。私が。
「見たところ、二倍よりは少し大きい様ですね。シルク様と同じスケールかと思われますわ」
「あ、そうなんだ」
別にその位の誤差は「二倍」で良いんじゃないかな。
いや、まぁ良いけどさ。
「この体格差ですと、余裕をもって収まりますわね」
「いやいやいや、何をやってんの」
いくら同性だからって人の股下に潜り込むんじゃない。
カトリーヌさんに変な意図が無いのは解ってても、流石に恥ずかしいってば。
確かに歩いて通れそうなくらいの大きさではあるけど、だからなんだって話でしょうに。
蹴っても悦ぶだけだし、上にでも動……
「ぴぃーーゃっ」
「んぉふぅっ」
こうかと思ったら、ぴーちゃんが私の股下をドロップキックで抜けて行った。
私の脚に全く触れずに通り抜けてく辺り、器用なもんだなぁ。
とりあえず感謝の念を送っておこう。
助かったぞ。




