1290:中身を気にしてみよう。
「あー……っと、とりあえず四人分と、ちっこいの達にも何か頼むよ」
「あいよーっ!」
若干相手の元気に押されつつ、アヤメさんが注文を済ませていく。
やたらと声がデカいから耳が辛めだけど、まぁ接客業なら仕方ないよね。
お上品な高級店とかでもないんだし。
「ほいほいほい…… ぃよっ、と」
刷毛でぺたぺた油を塗って、バケツみたいな容器に入った生地をだばーっと流し込んでいく。
えらい豪快だけど、きっちり適量かつほぼ均等に注がれてるな……
何かスキルでも持ってるのかって器用さだ。
流石にそんな謎のスキルは無いだろうから、自前の技術なんだろうけど。
「しかしこの鉄板、わざわざ特注したのか?」
「うん? あぁ、これ自作」
確かに、こっちに業務用タコ焼き器なんて売ってないだろうから、作ってもらうか作るしかないよね。
……っていうか手作りでこの完成度か。
さっきの流し込みといい、器用な人なんだな。
「この辺も全部な。開店が今日になったんも、これら用意すんのに手間取ったせいなんよ」
手際よく作業しながら、カチャカチャと他の道具を見せてくれるお姉さん。
……なんか今、生地を注ぐ道具っぽいのが有ったんだけど。
わざわざ作ったんだったら使おうよ。
「あともう一つ良いか?」
「ん? 質問? 注文?」
「質問」
「はいよー」
うん、この流れで追加注文の方はほぼ無いと思うよ。
一応言ってみただけだろうけどさ。
「……それ、中身なに?」
「んー…… タコ? うん、タコタコ」
……とりあえず、普通のタコでは無いって事は解るな。うん。
見た目はそこまでおかしな物じゃなさそうだけど、若干の怪しさは拭えない。
「食べて大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫大丈夫。ダメなら許可下りないし、自分でもちゃんと食べてみてるから」
「なら良いんだけど……」
あ、ちゃんと検査とか有るんだ。
まぁ当然と言えば当然か。
「あーいうのも良いかもなー」
「ん?」
なんかエリちゃんがタコ?焼きを見て呟いてるけど、何だろう。
良いかもも何も、これから食べるんだけど。
「入っちゃうと外見えないけど、それはそれで雰囲気楽しめそうだし」
……あぁ、具の立場の方ね。
そういえばそういうクマだったよ。
カトリーヌさんが「解りますわ……」みたいに頷いてるのもスルーしておこう。
「……やらないしやらせないからね?」
「ちぇ」
こっちを見るんじゃない。
頼むから私を巻き込まないでくれ。




