1289:初見に賭けよう。
さて、おじさんがエリちゃんにいじめられた以外は何事もなく市場までたどり着いた訳だけど。
結局何を食べるんだろうか。
「任せた」
「えー?」
あ、お姉ちゃんが押し付けられてる。
「んー…… あ、そうだ」
おや、お姉ちゃんが急にしゃがんで膝をついた。
……痛がるくらいならもうちょっとゆっくり動こうよ。
「何か食べられない物とか有るのかな?」
あぁ、シェラとクリスの食性の確認か。
今までみんな大丈夫だったけど、一応聞いておくに越した事は無いもんね。
「そっかそっか。クリスちゃんも?」
シェラが最初の質問に「無いよー」と首を振って、次の質問には「そだよー」と頷きを返してる。
クリスが顔を出さない以上、くっついてるシェラに確認するしか無いか。
「それじゃ、何か食べたい物は有るかな?」
あ、決定権投げた。
シェラがちょっと困ってるじゃないの。
「何かもなにも、その子たちは来るの初めてなんだから、何が有るかを知らないだろうに」
「あ、そっか」
あ、そっちの理由で困ってたのか。
大体の方針でも良いとは思うけどね。
「うーん、どうしよっかな…… あれ?」
ちょっと背伸びして辺りを見回してたお姉ちゃんが、何かを見つけたらしき声を上げた。
「何か気になる物でも?」
「初めて見る屋台が有るなーって。何かは判らないけど、空いてるみたいだしあそこにしてみよー」
新しく増えた屋台って事は、プレイヤーの誰かのお店とかかな?
単に入れ替わりが有ったり気付いてなかったりしただけかもしれないけど。
まぁみんな特に希望は無いんだし、そういう選び方でも問題は無いだろう。
ちゃんと許可を得て出店してるんだから、少なくともある程度ちゃんとした物は出てくるんだろうし。
「あれだよー」
「あぁ、確かに昨日は無かったな。……たこ焼き?」
「一見した限りではそう見えますね」
あ、本当だ。
完成品しか見えないから中身は判らないけど、見た目は完全にタコ焼きだな。
鉄板周りを見る限り、トッピングはほとんど無いっぽい。
大分シンプルな感じなんだろうな。
「おっ、いらっしゃーい!」
こっちに気付いた鬼のお姉さんが、元気な声を張り上げる。
……元々の背も高いのか、屋台の上側に顔がかぶって口元までしか見えてないぞ。
「ど」
「あらあらあらあら、妖精さんのご来店とは初日から縁起が良いねぇ! ささ、座って座って!」
……お姉ちゃんが「どうもー」か何かを言おうとしたけど、やたらとテンションの高いお姉さんのシャウトにかき消された。
というか私はともかく、皆に座らせるのは注文の後の方が良いんじゃなかろうか。
てかそれ、こっち見えてんの?
まぁ視線が通ってなくても感知する手段は色々有るから、あんまり気にするところでは無いか。
とりあえず、勧められたし私は見てるだけだし、大人しく座っておくとしよう。
……初日って言ってたし雰囲気もプレイヤーっぽいけど、やっぱり屋台付属の【妖精】専用席は用意されてるんだな。




