1281:出てきてもらおう。
とりあえず、耳元まで寄って呼びかけてみよう。
「ラキー、アヤメさん困ってるから出ておいでー」
「ついでに人の耳を撫でるんじゃない」
「ごめん」
だって目の前にモフモフしたのが有るんだから仕方ないじゃん。
仕方なくないのは解ってるけど仕方ないじゃん。
「ぅおお……」
あ、素直に出てきた。
一旦入っちゃった以上、くすぐったいのはどうしようもないから頑張ってくれ。
「はいはい、ちゃんとごめんなさいしようね」
手に飛び移って来たラキを乗せてアヤメさんの正面に移動して、一応謝らせておく。
勝手に人の身体で遊んじゃダメだし、そこはちゃんとしておかないとね。
この分だと、言われなくても謝るつもりではあったっぽいけど。
「怒っちゃいないからまぁ良いんだけどさ。ただくすぐったいし対応に困るんだよ」
爪の上に乗り移らせたラキを反対の指でくりくり撫でながら、苦笑気味のコメントを漏らすアヤメさん。
「甘々だねぇ」
「うっさい」
うん、いつも思うけど荒めな口調と違って本当に良い人だよね。
かなり色々好き放題されてるはずなのに、本気で怒ってるのは見た覚えが無いし。
本気で呆れたりしてるのはかなり見てるけど。
むしろ本当、よくキレないな。
普通なら何回かふざけんなよって言ってるでしょ。
……色々やらかしてる側というか元凶が言うなって話なんだけど。
本当に申し訳ないとは思ってるよ。うん。
「ほら、ちゃんと大人しくしてろよ?」
あ、あんな事された直後なのに頭に戻してあげるんだ。
こう言っちゃなんだけど、本当に甘いな……
「何だよその目は」
「優しいなぁって」
「うるさいよ」
「いや怖い怖い」
冗談というか脅かしてるだけなのは解るんだけど、デコピンをこっちの前に構えるのはやめてほしい。
うっかり指が滑っただけでも、当たったら普通に死ぬんだからさ。




