1249:存在を思い出そう。
「さて、それじゃ行くか」
「ん?あ、うん」
別の事考えてたから一瞬どこへかと思ったけど、どう考えても家にだな。
そもそもこの格好でこれ以上外には出られないし。
「おー、また今度な」
あそぼーよぅって顔したシェラが、ほっぺをぽふぽふ撫でられてる。
あ、そっと立ち上がった。
こっちにぶんぶん手を振って、静かに歩いてテーブルから降りていったな。
ちゃんとアヤメさんに気を遣うのを忘れてないな。偉いぞ。
「よっ、と、っとぉ!?」
机に置かれたシルクの手の上に、アヤメさんが手をついて登……ったと思ったら、なんか横からラキも駆け上がってきた。
どこから来たんだね、君は。
「ん? あぁ、支えててくれるって?」
わざわざ走ってきてどうしたのかと思ったら、足下の動きで転んだりしない様にくっついててあげるつもりらしい。
動かすのが私ならともかく、シルクなら大丈夫じゃないかとは思うけど。
「まぁお言葉には甘えとくか。シルク、動いて良いぞー」
何も言ってないってツッコみたいけどその点は人の事言えないし、解ってて言ってるだろうから黙っておこう。
あんまり調子に乗ってると後が怖いし。
……ん?
そういえばさっきアリア様、帰る時に「二人とも」って言ってた様な。
カトリーヌさんはどこへ……
「ってぉうゎっ!?」
「バレましたわ」
バレましたわじゃないよ……
なんでぴったり後ろにくっついてるんだ、この人。
「いや、何してんの…… めっちゃびっくりしたんだけど」
「申し訳ありません。背後に寄り添ってみたところお気づきになりませんでしたので、少し楽しくなってしまいまして」
……アリア様にもからかわれたか。
というか、むしろ気付く為のヒントをくれてたのか?
「なんでそんな、無駄に高性能なの本当……」
「恐れ入ります」
私達は翅が有るんだから、ぴったり背後についたらぶつかるだろうに。
何かが当たった感触は無かったし、ギリギリの位置を見極めてホバリングしてたのか。
「っていうか、アヤメさんも言ってよ」
「いや、自分で気づけよ」
「そうだけどさ……」
それを言われると反論出来ないよ。
【魔力感知】だって有るんだし、ぼーっとし過ぎだって言われたらその通りだとしか言い様が無い。
「というかな。内緒ですよってジェスチャーされたら、こっちから言う訳にもいかないだろ」
「……まぁうん」
敵とかならともかく、知り合いな上に特に何かする気が有るわけでもない相手だからなぁ。
わざわざバラしちゃう理由も無いっていうのはまぁ解る。
「しかし」
「ん?」
「忘れられるのは少し寂しいですわ」
「いやうん、そこはうん、ごめんなさい」
確かに申し訳ないんだけど、アレな時のキャラが濃すぎるせいで、まともに大人しくされてたら本当に居るのかってなっちゃうんだよ。
「冗談ですわ」
「……んん?」
「静かに付き従う者として、白雪さんの意識の外に潜もうとしているのはこちらの方ですので」
「……いや、まぁそれでも居る事自体は忘れないよね。というか従者ではないよね」
だから同じ【妖精】だってば。
どうせ言っても聞いてはくれないだろうけど、常に再確認していくからね。
「それにこちらといたしましては、放っておかれるというのも、それはそれで大歓迎ですので」
「あー、うん、そうだね、はい」
そういえばそうだったよ。
この人はそういう人だ。
でも普通に「二人」をスルーしてたのは確かなので、反省はしておこう。
相手がカトリーヌさんじゃなかったら、不機嫌になられても仕方ない事だし。




