1242:なんか力説されよう。
ん、なんか中でもぞもぞ動いてる。
狭い中で快適な姿勢でも探してるんだろうか。
……いや、なに人の手をくすぐってるんだ。
くすぐってるっていうか、これ掌紋の溝に指をひっかけて、掘るみたいになぞってるのか。
あのサイズからだと、線一本の幅が二センチくらいなのかな?
まぁうん、引っ掻きやすそうな間隔ではあるな。
何がしたいんだとは思うけど、そもそもこの状況自体がそうだし、その辺は気にするだけ無駄なんだろう。
ん?
なんか聞こえた様な……って中から指をぽんぽん叩いてる感触がするな。
もう良いぞって合図か。
「開けますんで転がらない様に気を付けてくださいねー」
一応忠告してからゆっくりと手を開いていく。
まぁ開くときの動きを考えれば、危ない事はそんなに無いだろうけど。
「ふう、危ない所であった」
「え、どうしたんですか?」
「いやなに、あまりに快適なものでな。危うくそのまま寝る所であった」
「……それは確かに危ないですね」
主に私の腕がだけど。
あと動けないから【浮遊】を維持し続けるMPとかもね。
一番問題なのはログイン時間……よりもそれに付き合わされるアヤメさんか。
「しかし、そんな良いもんですかね」
「うむ」
……仁王立ちで腕を組んで胸を張って、これ以上なく堂々と同意されてしまった。
これちょっと揺すったら怒られるかな。やらないけど。
「というかだな」
「はい?」
「【妖精】に触れているという事を抜きにしても、少なくともこの身体であれば、快適な要素ばかりだぞ?」
「……そうですか?」
「うむ。多少は自由な姿勢を取る事が出来る適度な狭さに、隙間から光が僅かに入ってくる程度の薄暗さ。そして柔らかく温かいベッドに、僅かに感じる周期的な鼓動と血流の音。安眠を促す要素の塊ではないか」
「……良い要素だけ上げればそうかもしれませんけど」
まとめて言われても頭に入んないよ。
というかあのサイズからだと、別にそんなに柔らかくないんじゃない?
いや、でも【妖精】の手だしなぁ……
よくわかんない生き物だし……
「本来ならば問題になるであろう換気や温か過ぎるという事も、この身体であれば無視出来る要素であるしな」
「あぁ、なるほど……」
言われてみれば、いくら末端とはいえ握ってる手の中なんて、本来なら快適な温度とは程遠いだろうな。
掌から出る水分とかも考えたら、高温多湿にも程が有る環境だろう。
……ん?
手汗…… うん、さっき多分ちょっと舐められたな。
なんか顔の有るであろう辺りで変な感触してた気もするし。
私は給水所でもご飯でも無いんだから、もうちょっと遠慮してほしいところなんだけど。




