1196:美味しく頂かれよう。
見てても仕方ないというか、うつ伏せだから近くまで来られると上を見るのも辛いので、大人しく台の穴に顔をはめて力を抜いておこう。
腕も前に上げて手を置く所……アームレスト? まぁ名前は知らないけど置いておこう。
普通にマッサージされるんだったらこのままリラックスしてれば良いんだけどなぁ。
無理なんだろうなぁ。
「では降りるぞ」
「ん、ちょっと冷たいですね」
どうやら靴は脱いでくれてるらしく、素足でぺたぺた背中を歩かれてる。
……どうでも良いけど降りるのか乗るのかどっちなんだって言いたくなるな。
いや、乗るために降りてるんだからどっちでも正解なんだけどさ。
「ふむ。流石に直接乗っていると、喋る時の振動もなかなか大きいものだな」
「あー、黙ってた方が良いですか?」
「いや、問題は無い。どちらかと言うと呼吸の揺れの方が大きいのだが、そちらは仕方のない事だからな」
「……まぁ終わるまでずっと無呼吸ってのは無理ですね」
まぁ一応ちょっと小声になる様、意識はしておこうか。
そもそもこれだけのサイズ差が有ると、普通に喋られるだけでも結構うるさいだろうし。
「ふむ」
腰の上あたりから三人でぷにぷに歩いて背中を登ってきたと思ったら、何やらアリア様が呟いた。
「ん?」
「やはりな」
「あー、本当ですね」
「……何が?」
なんか頷いてるっぽいアリア様と同意するアヤメさん。
とりあえず、出来れば本人にも教えてほしいんだけど。
「少し触れるぞ」
「あ、はい」
答えてはもらえない……というか行動が答え代わりなんだろうな。
翅の付け根辺りに立ってるし、用心が必要……っ!?
「……そこ、締まるんですねぇ」
「ふむ、手が潰されたな」
……なんか冷静に話してるけどこっちはそれどころじゃないんですけど。
ただでさえ敏感な翅なのに、根本の隙間に指なんて突っ込まれたらそりゃ力も入るでしょ。
っていうかそんな歯と歯茎の間みたいな隙間が有ったのか。
まぁ明らかに皮膚とは違う物だし、生えてる根元には有っても不思議じゃないって言うか当然かもしれないけど。
「いきなり何なんですか……」
「ほら、白雪の翅って砂糖出てるだろ?」
「え? あぁ、うん」
「それが根元に詰まっちゃってるみたいなんだよ」
「えぇ……」
何その構造の欠陥みたいなの。
まぁ生き物の身体ではそんなに珍しい事では無さそうだけど。
「という訳で、白雪の翅を掃除してやろうという事だ」
「どういう訳ですか」
だからもうちょっと自分が偉い人だって自覚をだな。
言ってもそのまま返ってくるだけだから言わないけど。
「アヤメさんまで一緒に何やってんの……」
「ん? あんたと一緒で状況に流されて開き直ってるだけだな」
「……それを言われるとちょっと困るんだけど」
うん、まぁ事実だな。
【妖精】的な振舞いなんて、普通の状態だと恥ずかしくて無理だし。
「それに、こちらにも利は有るのだから気にする必要は無いぞ」
「え?」
「うむ、美味い」
「……勘弁してって言いたい所ですけど、まぁ今更ですね」
「【妖精】だしな」
私からは見えないけど、さっきほじった粉の塊を食べたでしょ、アリア様。
パタパタ落としたのと同じ物のはずなのに、なんかちょっと恥ずかしいんだけど。




