1174:発想を変えよう。
くそぅ、あんまり油断してるとからかわれるかもとか思ってたのになぁ。
いや、多分言ってみただけで別にからかうって程の事じゃないんだろうけど。
「あー、まぁそれは置いといて……」
「なんかごまかし始めましたよ」
「うむ」
……いや、でも今度は確実にからかってきてるな。
多少は抵抗の意思を示したいところだぞ。
「踏みますよ?」
「望むところだが?」
「やっぱ無しで」
……うん、サイズ差的にパッと出てくる脅し文句を出してみたけど、ほぼ効果が無いチョイスだった。
アヤメさんがちょっと嫌がるくらいで、それも気分の問題でしか無いし。
というかまだ箱に入ったままだから、今踏んでもこっちが痛いだけだな。
……あとカトリーヌさんも踏まないんで、床に転がってないで起きようね。
「まぁそれは良いとして、やってみるんで用意してくださいね」
「うむ」
上から押さえるのもなんなので、箱の両側に手を添えて、と。
さっき中身だけ調整するのが難しいからって、まとめて操作して一体化させちゃったからなぁ。
別々のパーツならそっちだけって意識しやすいんだけど。
まぁ言っても仕方ないし、集中集中。
「んー……」
「変に力を込め過ぎて、柔らかくなった瞬間に挟み潰したりしないでくれよ?」
「あ、うん」
……言われなかったら危なかったかもしれない。
微妙に箱に添えた手に力が入ってたし。
というかそれを見て言ったのか。
視線が前に固定されてても、ある程度横も見える訳だしね。
……あれ?
別パーツなら大丈夫って事は、椅子を入れるくぼみを作れば解決するんじゃないか?
えーと、お尻の下をにゅっとへこませてからくぼみと同じサイズの椅子を…… ちょっと大きかったから小さくして、と。
よし入った。
「何してるんだ?」
「いや、調整が難しいなら別で置いとけば良いって事に気付いた」
「あぁ、そういやそうか」
よし、今度は勝ったな。
別に勝負してないけど。
まぁそんな事は良いとして。
「んじゃ改めて…… っと」
転ぶ心配も無くなったし、一気に溶かして大丈夫だろう。
えいやー、っと。
「んー…… んんっ!?」
「え、どうかした? 大丈夫?」
なんかアヤメさんが驚いた声を上げたと思ったら、いきなり大きく息を吸いこんだ。
「……あー、大丈夫大丈夫。多分液が肺から下にすり抜けて行った分、無理矢理吸い込まされただけだと思う」
「あ、そうか。もうちょっとゆっくりやった方が良かったなぁ」
「ま、吸い込み損ねたとしても待つだけで治るのだから、これでも問題は無かろう」
「それはそうですけどね……」
怪我しないからって気にしなくて良いって事にはならないんですってば。
そっちが良くてもこっちが気になるんだから。
「むう、しまった」
「何かありましたか?」
「せっかくなら黙って潰れておけば、それを口実に治療してもらえていたのだな」
「……わざとやるのは止めてくださいね?」
というか別に、吹くくらいの事は頼まれればいつでもやるからさ。
無駄にダメージを受けようとするのは、カトリーヌさんだけで十分なんだよ。




