1095:名前に困りつつ呼んでいこう。
「で、どういう生き物なんだ?」
「察しが付くと言うだけで正解かは判りませんし、実際に呼んでみた方が早いのでは?」
「それもそうか」
なんか契約する方向で話が進んでいる。
いやまぁ気にはなるしせっかくだから、元々するつもりではあるんだけどさ。
「んじゃまぁとりあえず、まずは蛇っぽい方から…… あー…… 名前どうしよ」
「フィーリングで!」
「いや、まぁうん、そうするしかないんだけどさ」
それが苦手だから困ってるんだよ。
どんな名前でも気に入って大事にしてくれるんだろうけど、だからこそあんまり変な名前にするのは可哀想だし。
……でもまぁ実際、こうして悩んでて良い名前が出るなら苦労してないんだよね。
うん、諦めてなんとかなるさの精神で進めよう。
「よし、じゃあポチっと」
まぁこうして進めたら、即座に名前の入力画面とご対面なんだけど。
どうしたものか。
「クロリスティックブームスラミア」が種族名だし、そこから何とか拾えれば……
んー…… クロ……
ロリ……は無いな。うん。
今日から君は「ロリラミア」だとか言われたら、たぶん何の虐めかと思うよ。
いや、もしかしたらシルクみたいに子供の見た目かもしれないけど、事実ならそれはそれでどうかと思うし。
……発音次第では普通の名前にも聞こえそうだけど。
「どうするんだ?」
「んー…… あ」
クラリス……は大分ヤバいらしい人と被っちゃうのを知ってるからやめておいて、クリスちゃんで良いのでは。
いや、それはそれで一般的過ぎて誰かと被ってる可能性は高いけど。
知っててつける訳じゃないから良いんだ。うん。
「よし、クリスちゃんでいこう」
「一応聞いとくけど、『ちゃん』は含んでないんだよね?」
「うん」
そもそも女の子なのかも判らないし。
いや、ぴーちゃんの時はその辺を考慮せずに付けたけどさ。
出てきたのがごっついお兄さんだったりしたら、違和感が凄かったろうな……
というかお姉ちゃん、ぴーちゃんが横で「私の名前に何か文句でも有るのかー?」みたいな顔してるけど。
別に怒ってる訳じゃないっぽいから、別に良いけどさ。
「ほい、それじゃ召喚っと」
決定ボタンをポチっとな。
おー、出てきた出てきた。
……よく考えたらサイズとか判らないんだし、一応離れてからやった方が良かったかもしれない。
あ、大丈夫っぽいな。
割と小さめに光がまとまり始めたし。
そろそろ実体化…… あ、見えてきた。
「おー、綺麗だねぇ」
「うむ。まるで宝石の様な鱗だな。見事なものだ」
うん、やっぱりラミアの女の子だな。
とぐろを巻いた上にぺたーって伏せた状態で出てきた。
長くてつやつやな明るい緑色の髪と、同じ色の鱗に覆われた細長い蛇の体。
顔が見えないから判らないけど、やっぱりそこも同じ色なんだろうか。
人間部分は私の半分もないスケールだけど、蛇の部分も併せたらかなり長そうに見える。
まぁ今はくるくる巻いた状態だから、正確な長さは解らないんだけど。
胸と腰に黒い布が巻かれてるけど、そこは緑じゃないんだな。
いや、別に良いんだけどさ。
お、動くのか?
そーっと顔を上げ…… たと思ったら、即座に伏せ直した。
なんなんだ。
一瞬見えた感じだと、かなり大人しそうな顔の子だったな。
あと瞳はやっぱり緑色だった。
なんかお姉ちゃんたちを見てから伏せたっぽいし、巨大な生き物に囲まれてる状況にびっくりしてるんだろうか。
レティさんが指を口に当てて「静かにしてあげましょう」ってやってるし。
まぁとりあえず見てても仕方ないし、こっちから寄っていってみよう。
「えーと…… クリスちゃん?」
あ、ピクッて反応した。
そろーっと顔を上げてこっちを見て……
「おわっ!?」
くるくる巻いてた体をほどく勢いを使って、私の胸に向かってバネみたいに跳んで来た。
……いくら小さいとは言っても全体だと私より重そうだし、流石に結構な衝撃が有るんだけど。
まぁ受け止めきれないほどじゃないし、珠ちゃんの頭突きに比べたら大したことは無いな。
とりあえず落ちて行かない様に、背中と腰のあたりを抱いてあげて、と。
んー、抱いてみた感じだと、やっぱり私の半分も無いみたいだな。
蛇の部分、丁度親指と中指で輪っかを作ったくらいの太さだろうか。
直径十五センチ弱って感じかな?
【妖精】からしてみれば、抱っこしやすいお手頃な太さだな。うん。
しかしまぁなんというか、大人しいというか怖がりな子みたいだなぁ。
跳んで来る時の顔、完全に「こわいよぅ」って感じだったし。
ん?
私の胸元からそーっとこっちを見上げて……
あ、安心した様な顔になった。
私の顔も怖い方だと思うんだけど、そこは「ごしゅじんさま」補正なんだろうか。
まぁ怯えられるよりは良いって言うか、あの勢いで怯えられてたら普通に困るけど。




