1092:他の理由も聞こう。
「っつーか、別に助けてやる義理も無いしな」
「え?」
「あれを習得してる時点で大抵は並の使い手じゃない訳だが、それだけの腕の持ち主が『そういうスキル』だと知った上でやってる事だからな」
「……あー、元より覚悟の上だし、下手に手を貸すのも失礼みたいな事ですか」
言われてみれば、ジョージさんすら習得してない様な技の持ち主って事だよね。
いや、ジョージさんはあえて覚えてないだけって可能性も有るけど。
「ま、いざとなったらヘタれてた奴も居たそうだが」
「ダメじゃないですか」
「そういう奴は助けても……」
「ん?」
なんかジョージさんがいきなり背中に手を突っ込んだけど、どうしたんだろうか。
ん、なんか紙を取り出した?
「……あー、『あんまり可哀想だったから頑張って声をかけてみたら、無事に帰れると思った瞬間に元の調子に戻ったので、遠くに捨てておきました』だそうだ」
「……うん、その手の人が多いんですね」
自分で勝手に遭難しておいて、助けが遅いだの何だのと言うタイプなんだな。
まぁ確かに、別に助ける義理も無いのに手を貸そうとしてそんな感じの対応をされたら、見捨てたくなるのは解らなくもない。
……っていうか聞いてたんだ。
「まぁそれはそれとして、だ」
「はい」
アリア様が話を戻しにかかった。
いや、まぁ本来の話からはズレたままだろうけど。
「迷子の次に多いのが、自らの意思でこの世界を捨てる事だそうな」
「自分からですか?」
「うむ」
別に迷ってないし生きてるけど、帰って来ないのか。
まぁこっちからはどの状態だとしても、『生存確認』は出来ないし同じ事かな?
「どうも文字通り次元の違う存在と成る事で、思考までそちらに寄ってしまう事が有る様でな」
「思考ですか?」
「うむ。簡単に言えば高位種族の様に、『人間』の世界の事などどうでも良くなってしまうらしい」
「……ある意味壊れちゃってませんかね」
ある意味では悟りを開いたって言えるのかもしれないけど。
「まぁ否定はせんが、解らなくもないな。何であろうとそっと触れるだけで壊せてしまう様な世界での地位や金銭など、なんの価値も無いと思ってしまうのだろうさ」
「ん? 触れるだけで?」
「あぁ、基本的に上の次元からの接触は、抵抗する術は無いぞ?」
「えぇ……」
ちょっと強すぎやしない?
あ、だからすぐにお仕置きが飛んでくるのか。
「先ほど平面に例えたのと同じ様に言うなら、この板を突き破る事は出来なくとも……」
アリア様がテーブルをコンコンと指で叩きながら、またしても後ろに手を伸ばす。
今度は…… 鉋屑みたいな、ぺらっぺらの木が出てきた。
……コレットさん、なんでも持ってるのか、今生産したのか。
まぁどっちでも良いか。
「これならば簡単に破れるだろう?」
「まぁそうですね」
プスッと指で貫いてるのを見ながら答える。
うん、薄ければまぁ簡単だろうけど、あれだとまだ私には辛そうだな。
いや、そこはどうでも良いのは解ってるけど。
「実際にはこれでも分厚過ぎる…… というか、厚みという要素が無い訳だが」
「あー」
厚いとか薄いじゃなくて、無なのか。
紙だろうと私が限界まで薄く作った魔力の板だろうと、厚み自体は存在してる訳だし、実際に体感する事は出来ないんだろうな。
「ちなみに高位の存在達は、当然の様に無効化する様だがな」
「あー……」
うん、まぁそうなんだろうね。
……ん?
てことは、一応私達やソニアちゃんにも抵抗する事は出来るって事か。
いや、まぁ私達の場合はその現象自体に抵抗できても、普通に物理的な力で潰れそうだけど。




