1090:活用法を提案してみよう。
「とはいえ、やっぱり実用性はあんまり無いんだけどね」
「まぁ動けないってのはねぇ……」
「それも有るんだけどさ」
「ん?」
「咄嗟に使えるものではありませんしね」
「あー、難しそうだもんね」
レティさんが横から答えてくれた。
うん、動けないって事は展開したままではいられないんだから、完成までの時間が問題になってくるよね。
「消費も大きいしな」
「うん。反応できたなら【跳躍】でも使って逃げた方が、安くて早いんだよね」
「まぁ何度も躱す必要が有る状況だったら、それで籠った方が良いかもしれないけど」
「結局、設置する余裕が有るかって事になるんだよね」
「まぁな」
ずっと瞬間移動で逃げ続ける事を考えたら、立て籠もった方が安くつくだろうけど、そうなるとやっぱり設置時間が問題になってくるんだよなぁ。
正確な位置に三体の分身を召喚して、なおかつ綺麗に合わさる様に正確な壁も作らないといけないし。
あ、配置はセットしておけば良いだけか。
壁は…… 柔らかく作ってフィットさせてから、追加で魔力を注いで強化とかもできそうだけど、それはそれでやっぱり時間がかかるだろうな。
普通の状況なら全然問題無いけど、即死攻撃が飛んできてる状況だと一瞬のタイムラグが命取りだろうし。
あとそんな時に落ち着いて精密作業なんて出来る気がしないよ。
「まぁ、解っていて試したのだから落胆も無かろう」
「そうなんですけどね」
うん、なんかアリア様がやってみようぜーって言うのに乗ってただけだしね。
設置速度はともかく、消費と移動の問題は最初から解ってた事だし。
「白雪さん、良い事を思いついたのですが」
「ん?」
何やらカトリーヌさんがひらめいたらしい。
……その「良い事」っていうのは、私にとっては「良くない事」なんだろうなっていうのが、カトリーヌさんの顔から大体察せるんだけど。
「あー…… 一応聞くけど、なに?」
「町の外に出てその状態になる事で、非常に良質の囮になる事が出来るのでは」
「いや、なりたくないよ……」
確かに異常なくらいに有効だろうけどさ。
私が蹴り殺されるまでの間、足下ではボーナスステージみたいになってたっぽいし。
でもなんか、そういう安全かつ美味しい行為って変なペナルティとか……
「止めとけ」
おや、まさかのジョージさんからストップがかかった。
って事は割と重めな、実害の有る問題が発生するやつなのか。
……そうじゃなきゃこの人、むしろ面白がって勧めてきそうな気がするしね。
「そりゃまぁ、言われなくてもやりませんけど」
カトリーヌさんじゃあるまいし、という言葉は飲み込んでおこう。
普通に察せるだろうし。
「問題が起きる可能性が有りますの?」
あ、なんか真面目に確認してる。
自分が覚えたらやってみるつもりだったな?
「最悪の場合、その辺をぶらついてる高位種族まで呼び寄せる可能性が有るからな」
「あー、無しですね」
うん、下手したらこの街ごと消えてなくなるね。
どう考えてもアウトなやつだわ。
「しかし、外に出るだけで呼び寄せてしまうのでは、【妖精】の外出自体が禁忌となってしまうのでは?」
あぁ、確かに。
長時間外に居たらダメだって言うなら、普通に出る事も出来なくなるよね。
「あぁ、それは大丈夫だ」
「え?」
「その手の…… なんつーか、簡単に言えば『ズルい』気配を察知してるのかは知らんが、まぁそういう事をしてると面白がって寄ってくるみたいだからな」
「えぇ……」
……要するに、お仕置きって事なんだろうか。
まぁ確かに、そんな事されちゃ色々とマズそうだけどさ。
「うちのベルは知ってるだろ?」
「一応って感じですけど、はい」
直接コンタクトを取ったのは、レティさんだけだけど。
「あいつは特殊なスキルで常時別の次元に隠れてるんだが」
……同じ隠密さんでも会えないって凄いと思ったら、隠れてるとかそういうレベルじゃないのか。
「その状態でこっちの世界に干渉してるとヤバい気配が近づいてくる、っつって口実にしてるくらいだからな」
ああ、異次元から攻撃とかの影響だけこっちに飛ばせるなら、自分は絶対に安全だもんなぁ。
それで戦い続けられるなら、ズルいなんてもんじゃないな。
「……って、口実ですか?」
「ありゃ単に人が怖くて近づきたくないだけだ」
「あぁ……」
でもまぁ、それが解ってても本当にヤバいのは事実だから許されてるんだろうな。
いや、そうじゃなくてもまぁ仕方ないかって感じで許されそうだけど。




