1081:押してみてもらおう。
「まぁ良いけど、そこからどうするの?」
「えーと、とりあえず横にずれて……」
横と言うか斜め上?
まぁ前後には動けないから、横には違いないけど。
あ、ダメだ。
横に動こうとしたら、後ろの私は反対に行っちゃうな。
上下くらいしか動けないや。
まぁ高さだけ調節するとしよう。
「この位かな? コレットさん、ちょっと良いですか?」
「はい」
静かに控えてたコレットさんに声をかけて、こっちに来てもらう。
ん、コレットさんの身長だともうちょっと上かな?
胸の高さくらいが多分丁度良いだろうし。
……あ。
「ふむ、一度動いた方が良い様だな」
「すみません」
「なに、気にするな」
もともとアリア様の正面でやってたから、一度退いてもらわないといけなくなってしまった。
うっかりしてたなぁ。
「それじゃ、ちょっと正面から押してみてもらえますか?」
「承知いたしました」
コレットさんの事だから私の意図くらいは大体察してそうだけど、一応「正面から」をちょっと強調してお願いしておこう。
……一応壁を作ってあるとはいえ、やっぱ正面から自分と同じくらい大きい手が迫ってくるのはちょっと怖いな。
いや、自分でやってくれってお願いしたんだけどさ。
お、計算通りだな。
コレットさんの手のひらがむにーって押し付けられても、私は動かずに済んでる。
「もう少し力を込めてみてはどうだ?」
「はい」
「慎重にお願いしますね……?」
言うまでも無いだろうけどさ。
流石に大丈夫だとは思うけど、コレットさんならこの障壁を粉砕出来るかもしれないって心配してしまうんだよなぁ。
だってコレットさんだし。
「動きません」
「うむ」
報告も返答も簡潔過ぎやしないだろうか。
いや、何も困らないから別に良いんだけど。
左手も添えて思いっきり押してきてたけど、微動だにしなかったな。
「……凄いんだけど、それあんまり意味無いんじゃない?」
「まぁうん」
流石にお姉ちゃんも気付いてるか。
いや、別に本当に頭が悪い訳じゃないんだから、意外でもなんでもないけど。
コレットさんが一旦手を離して人差し指だけでそっと押さえてくれたので、背後から伸びている持ち手を離してフリーにする。
持ち手は一度消しておいて、と。
「正面方向以外の力には無抵抗だしねぇ……」
私の言葉通りに、コレットさんが私にぶつからない程度に障壁をすいすいと上下左右に動かしてくれた。
直接何かを指示しなくても静かにサポートしてくれるの、本当に助かるな。




