1068:慎重に挟まれよう。
「で、ちょいちょい試しはしたけど、あと何が残ってるかな」
とりあえず帽子みたいな装備品も連動して動く事とか、私の防御面が更に劣化してる事とかは解ったけど。
あと入れ替わり関係。
「では、少し良いですか?」
「うん?」
レティさんが真後ろから私の両側に手を伸ばしてきた。
何をするつもりかな?
「慎重に行きますので、押し返してみてください」
む、挟んでみようっていうのか。
「……まぁレティさんなら大丈夫か」
言われた通り、両手を広げて左右の分身の手をレティさんの掌にぷにっと押し付ける。
お姉ちゃんならともかく、レティさんがやるなら怪我はしないだろう。
「なんでチラっと私を見るかな」
「うっかり潰しそうだからだろ」
「むぅ」
拗ねてもダメだぞ。
いくらペナルティが無くても、一瞬とはいえかなり痛いんだからね。
「では」
「うん」
じわりじわりと左右の壁が迫ってくる。
視点が中央の私だから視覚だといまいち実感しづらいけど、両手から伝わってくる圧力で何となく解りはする。
「なんか真ん中の雪ちゃんだけ見ると、遊んでるみたいに見えるね」
「いや、本気で押し返してるだけだから」
力に差が有り過ぎて、無駄としか言いようがない抵抗だけど。
「うん。それは解ってるんだけど、なんかパントマイムやってるみたい」
「……まぁ確かに」
何もない空間に全力で抵抗してるんだから、そうもなるか。
多分、私も誰かがやってるのを見たら同じ感想になるんだろう。
「っていうか無理無理無理」
レティさん、慎重にやるのは良いんだけど、限界まで試そうとしなくて良いから。
もう狭くなりすぎて手を外に向けられなくなってるよ。
というか肩を押され始めてるよ。
「やはり配置が広がれば広がるほど、壁などに気を付ける必要性が大きくなりそうですね」
「みたいだね……」
陣形の端っこが壁とかにぶつかった時点で、もうそっちには行けないって事だし。
「……それ、やらなくても解ってただろ?」
「まぁそうなんですが」
「なんで私は挟まれたの……」
「なんとなく、でしょうか」
やってみたかっただけかい。
まぁ痛くは無いから良いけどさ。
……っていうか、無理に押し返そうとしなかったらふわっと包まれる程度までしか近づけてないし、痛いどころかなんか落ち着く気がする。
ゲームを始めたばっかりの町中で飛べなかった頃、手に乗せて運んでくれたりしてたしなぁ。
うん、ちょっと暖かい気もするし、悪い感覚ではないな。




