1049:お仕置きは許そう。
「あだっ、たっ!?」
……せめて復活する時くらい、そっとおろしてくれないもんかな。
しかもなんでベッドから体が半分はみ出た位置に出るんだよ。
お尻片方だけ打った上に転げ落ちたじゃないか。
まぁそれはともかくとして。
とりあえず、心配かけてもいけないし皆の所に戻るとしようか。
部屋の窓からテラスに出ると、顔を押さえてゴロゴロ転がってるお姉ちゃんが見えた。
……縦回転する視界にチラッと見えてたけど、私が受け止める前提で飛び込んできたもんだから、すり抜けて思いっきり地面にキスする羽目になったんだな。
悪気が無いのは解ってるけど、自業自得だぞ。
まぁ芝生だったんだし、むき出しの地面とか石畳よりはよっぽどマシでしょ。
「ただいまー」
ってなんだあの状況は。
なんかアヤメさんがコレットさんに抱きかかえられてる。
あ、私がいきなり死んだから、机の上で元に戻る羽目になったのか。
机の上に着地する前に回収されたとか、そんな感じだろうな。
「大丈夫か?」
「あ、はい。痛みはそんなに無かったので」
「そうか。それなら良いのだが」
むしろ復活した時の方が痛かったくらいだし。
いや、まぁ死ぬ前の光景はかなり怖かったけどさ。
あんまり痛くないとはいえ、よりによって顔が下を向いてる状態で地面に激突したし。
……あ、一応あの状態でも、【浮遊】は使えなくはないのか。
多分だけど。
いや、まぁ咄嗟にそんな判断するのは流石に厳しいけどさ。
「こっちは大丈夫じゃない……」
「あんたのはただの自滅だろ」
お姉ちゃんのうめき声をアヤメさんがバッサリ切り捨てる。
うん、仕方ない。
実際、よく解ってない状態なのに迂闊に突っ込んできたんだから、叱られても文句は言えないだろう。
いや、私も何も考えずに受け止めようとしたんだけどさ。
「普通、ああなるとは思わないじゃない……」
うん。
「【妖精】のどこに普通な要素が有るんだよ」
……うん。
「あ、そうだ」
私が死んだからシルク達が還っちゃってるし、呼び戻しておこう。
えーと、シルクにぴーちゃんに、ラキにポチ、と。
「……悪気は無かったんだから、ほどほどにねー」
「ほどほどにじゃなくて止めてよぅ……」
呼び出した子から順番に倒れたままのお姉ちゃんの所に飛んで行って、ぺちぺちとお仕置きを始めてる。
まぁうん、痛くはされてないみたいだし、ちょっとくらい仕返ししても良いでしょ。
「しっかし、見事に消し飛んでたな」
「脆いかもとは思いましたが、流石にあそこまでとは……」
アヤメさんとレティさんが、苦笑しつつ感想を話してる。
正直、自分からだといきなり過ぎて殆ど解らなかったんだよなぁ。
とりあえず、生首にちょっと肩の辺りが付いた程度だけが残って、思いっきり縦に回転する羽目になった事くらいか。
いや、それだけで十分か。
そこから下はお姉ちゃんにぶつかって潰れたって事だろうし。
……まぁうん、ちょっと色々と散らばったかもしれないけど。
そこは気にしないでおこう。
「雪ちゃん、柔らかいなんてもんじゃなかった……」
「まぁうん、一瞬も耐えてなかったしね」
「ちなみに、どんな感じだった?」
「その情報要る?」
「いや、なんとなく」
うん、一応聞いとくかって感じなのは解るけどさ。
まぁ良いか。
変化後の強度っていう情報って考えれば、無いよりは有った方が良いんだろうし。
「うーん…… 生クリーム…… ほどは無いかな……?」
「以下か……」
以下なのか……
「あー、泡の洗顔フォームとかかな」
「……もう形を保ってるのが不思議なくらいだな」
……お姉ちゃんが使ってるやつって、結構軽めの泡になってたと思うんだけど。
あの程度の強度しかないって、もはや風が吹いただけで死ぬんじゃないか?
あ、【浮遊】で風とかの抵抗を軽減してるから、空気だけなら一応大丈夫だったのかな。
その風で何かが飛んで来たらアウトだろうけど。
「【浮遊】を解除すると、自重で崩壊しそうですね」
「あの感じだとサイズ相応の重さは無いだろうし、なんとか耐えるかもな」
「あんまり試したくはないなぁ……」
でもなんだかんだで、一瞬だけやってみるかーってなるんだろうな。
慌てて再起動する羽目になるんだろうけど。
「ああ」
「ん?」
カトリーヌさんが、なにやら納得した様な呟きを発してる。
「確かに『ゆるふわ』ですわね」
「あー…… 物理的にかぁ……」
うん、まぁうん、確かにね。
ゆるゆるのふわふわかもしれないね。
……全く嬉しい要素ではないなぁ。




