1041:いつもより多めにかけよう。
「では…… あぁ、一応警告はさせていただきますね。『ここから先は私有地となっておりますので、関係者もしくは許可を得た方以外の立ち入りはご遠慮願います』」
「うぃっす」
ああ、やる気は満々だけど、一応まだ入ろうとはしてないもんね。
たとえ常習犯でも、黙って先制攻撃するわけにはいかないのか。
「では退去していただけないという事で」
「いや、俺まだ動いてないんですけど」
「細かい事はどうでも良いのです」
返事とほぼ同時に動き出すモニカさんにツッコミを入れるも、サクッとスルーされるお兄さん。
あんまり細かくはないと思うけど、どうせ事実だから別に構わないんじゃないかな。
「しかし本当、よくやるよな」
「あー…… なんかあの人、モニカさんが好きで構ってほしいらしいよ」
「どう考えても手段を間違ってるだろ……」
アヤメさんが呆れてたので、近づいて出来る限りの小声で動機を教えてあげたら更に呆れた顔になった。
うん、まぁそうだよね。
あと当のモニカさんに伝わらない様に声を潜めたけど、聞き取られてる可能性は十分に有るんだよなぁ。
まぁうん、割と簡単に察せるし、普通に解ってそうだから別に良いか。
アヤメさんも別段意外そうな反応でもなかったし。
「本当にそういう動機だなんてアホなんじゃないのか」みたいな顔はしてたけど。
「あ、取られた」
「ん?」
あ、お兄さんが片足立ちになってて、もう片方の足首をモニカさんに正面から掴まれてる。
前蹴りしようとしたわけじゃないだろうに、どうやったらああなるんだ。
おや、少し前に屈んで、膝から先に抱き着くみたいにがっちりホールドしたぞ。
ちょっと捻っ…… たと思ったら、掴んだ足を軸に凄い勢いで逆回転。
錐揉み二回転で着地するモニカさんと、うつ伏せに倒れるお兄さん。
……いや、あれうつ伏せって事は半回転分は追いつけなかったって事だよね。
膝が完全に破壊されたんじゃなかろうか。
抱えていた脚を放しておしまい…… ではないんだな。
うん、お兄さんまだ生きてるもんね。
正直あれはもう勘弁してあげて良いと思うけど。
あ、背中にドスッと馬乗りになった。
せめて跳んでからじゃなくて普通に座ってあげない?
いや今は敵だから別に良いのか。
うつ伏せでうぐぐと呻いてるお兄さんの両脇から手を差し込んで、後頭部に添えて軽く力を込める。
肩とか首とか、かなり痛そうだな。
いや、そんなに力を入れてる様に見えなくてもモニカさんのパワーだし、痛いどころの話じゃないんだろうけど。
って、まだ続きが有るのか。
ガッチリ締めるのは続けたままで、ゆっくりと体を起こしてお兄さんの体を逆に曲げて行ってる。
……もうお兄さんの胸は完全に正面を向いてるけど、動きを止める気がなさそうだな。
普通、人の背骨はそれ以上曲がらないと思うよ。
あ、ヤバそうな音がこっちにまで聞こえてきた。




