第71話 ララとルミ姉さん
ガサガサっと背後の茂みから音がしたのでルミ姉さんは少し警戒して振り向いて見ます。
ただ、音のなり方や足音などから近寄ってきているのは十中八九ララだろうと見当が付くのでさして焦ってはいません。
<ちなみにリンディアさんは不寝番をする為に早めに寝てしまっているので今起きているのはルミ姉さんだけです>
「お姉さま、戻りました」
ルミ姉さんの予想通りに茂みから現れたララは手に入れた三羽の鳥を掲げて捕れた獲物と無事に帰ってきたという報告をします。
ところで今現在ルミ姉さんは倒木の前に敷物を敷いてそこにサハラさんを寝かせて膝枕してあげているのですが、そのおかげで背後から近寄ってきたララからはサハラさんが丁度死角になって見えていません。
「お帰りなさいララエル。 あら、鳥だけ? この辺りならウサギの方が獲りやすかったはずよね?」
ララの獲ってきた獲物は確かに美味しいと評判の鳥でしたが、この辺りでは珍しい種類の鳥ですし匂いや気配に敏感なすばしっこくて獲りづらい物ばかりなのでした。
それを見てルミ姉さんは不思議に思い聞いてみたのですが、ララからの返事は至って単純な答えでした。
「ええ、だって昼間サハラにウサギ獲ろうかって聞いたら要らないって言ってたんですもの」
“きっと鳥のが好きなのね”と笑顔で言いながら弓などの道具を片付けに自分の荷物の方へ去って行きます。
(そう、サハラは鳥が好きなのね)
と、何かに影響が出るかどうかは微妙な所ではあるのですが、サハラさんの気づかぬ内に全くの誤解が広がっていくのでした。
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それからすぐの事。
「お、お姉さま! サハラが……サハラがいないわ!!」
荷物を片付けた後、なぜかそのあたりをうろちょろしていたと思ったララなのですが、次第に焦りだして大きな声でそんな事を言い出します。
「落ち着きなさいララエル。 大丈夫よ」
(うるさいわ、サハラが目を覚ましてしまうじゃない)
なんて思いながらルミ姉さんはサハラさんの髪を撫でてあげます。
「どうして落ち着いて居られるのですか! サハラが……サハラが居ないんですよ!? それに大丈夫ってどう言う事……ま、まさかお姉さま……何か心当りがあるんじゃ……」
(も、もしやお姉さまがサハラを追い出しちゃったなんて事は……いえ、さすがに大丈夫か。 いくら短気なお姉さまでもそんな事しないわよね。 うん、大丈夫、大丈夫……)
大丈夫と自分に言い聞かせるララですが、どこか不安を払いきれずにルミ姉さんを疑ってしまいます。
「ええ、心当りならあるわよ。 それよりもまずは落ち着いてもう少し小さな声で話してくれるかしら」
ララからの疑いの問いを事も無げに答えて、それどころか静かにするように促します。
「な、お姉さま、サハラを無理矢理追い出しちゃったんですか!? なんて事を!」
「馬鹿! 貴方なんて酷い事を思い付くのよ! と言うか私がそんな酷い事をすると思っているのね!? 馬鹿な事言ってないでこっちに来なさい、そうすれば分かるから」
姉に対してなんて酷い事を言う妹だろうかと思いつつも、それと同時に手招きして近くに来るように呼び寄せ、ララもしぶしぶながらそれに従って倒木の裏からルミ姉さんの居る側に歩いて行くのですが――
「な、なんで!?」
――それでようやくララはサハラさんが平和そうにルミ姉さんの膝枕で寝息を立てている事に気が付くのでした。
〈ちなみに酷い事を言われるのはルミ姉さんの今までの行動からしてわりと自業自得な気もしますが……〉
「ね、大丈夫でしょう? 分かったなら落ち着きなさい」
ルミ姉さんもこれで誤解も解けて静かになるしサハラを起しちゃわなくても済みそうね、と安心したのも束の間、ララはワナワナと震える肩で心の底から絞り出すかの様に言い募ります。
「私に狩りをしろなんて言って追い払ってる間にサハラを籠絡するなんて……いったい何が狙いなんですかお姉さま!?」
「……何を言っているのかしら?」
(どうしてそう言う考えになるのよ。 それに、むしろ籠絡というのなら私がしたのでは無くて、私がされたと言った方がしっくりくるわね)
「…………ずるいです」
「え?」
「お姉さまばかりずるい、私もサハラを膝枕したいです!」
「ええ……? もう、しょうがない子ね。 良いわ、代わってあげる、と言いたい所だけど今は無理ね」
“サハラが起きちゃうもの“と言いながらやっぱりルミ姉さんはサハラさんの髪を撫で続けます。
それを見てララが“ぐむむむむー”と唸りながら地団駄を踏んで悔しがります。
「ふふ、冗談よ。 おいでなさいララエル、交代出来ないのは本当だけれど、貴方もここに座ってサハラを撫でてあげなさいな」
そう言ってルミ姉さんはサハラさんの寝ている側とは反対を手でペシペシ叩いてララを座らせます。
「うぅぅ、仕方無いですね。 サハラを起しちゃったら可哀相ですものね。 分かりました、膝枕する権利を今日はお姉さまに譲ります」
そう言ってララはルミ姉さんの横に座ってサハラさんを優しく撫でてあげるのでした。
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ちなみに実はこの状況なのですが、大好きなララと可愛いサハラさんに囲まれて一人ご満悦なルミ姉さんは(うふふっ♪ 計画通りよ!)と、心の中で喜びの声を上げるのでした。
ララとルミ姉さんが怒鳴る様に言い合ってても起きないサハラさんなのでした。




