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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
カララの町 《取引編》
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第56話 閑話《ローナさん》




「えっへっへー! いいわぁ、すっごい良いわぁ♪」



 とある宿屋の隣にあるとある酒場、この酒場のこれまた片隅にあるとある個室、その部屋の中で料理やお酒そっちのけで怪しく笑う真っ赤なローブを着た一人の魔法使いがいました。

 その声の主は周りに居る仲間に引かれて居るのにも気が付かず、だらしなく破顔して自身の手に持つ杖に頬ずりをしています。



 しかもそれだけならまだしも『えっへっへー』とか『ふふっふふふっふっふふ♪』とかちょっと残念な感じに笑い続けた挙げ句、しばらく経つと感極まって周りの仲間にすでに何度目になるのか分らない自慢が繰り広げられるのでした。



「見てよこれ! 全部ミスリル製なのよ! ねえ信じられる? しかもよ? しかもここ、この魔力共鳴材はなんとレッドドラゴンアイなのよ! ねえねえ知ってるでしょ! てか知ってるの? この共鳴材って去年調子乗って遠征したときに危うく全滅しそうになったあのレッドドラゴンの――――」



(ちょっとちょっとー、いい加減誰かあれ止めてよね)


(誰かって誰だよ? 上機嫌のローナに水を差した日にゃ命がいくら有っても足りねえよ。 俺は嫌だね、お前やれよ)


(ば、馬鹿! わたしだって嫌よ! 火遊びローナの二つ名を体感したくなんて無いからね!)


(……右に同じく)



 何を隠そうこのPTはサハラさんからミスリルロッドを買ったローナさんが率いる『火焔の道』と言う名のCランクPTなのです。


 所で余談ですがこのPT、実は男二に女三の比率なのですが、PT内恋愛の末二組の夫婦が出来たのです。 そこまではままある事なのですが、珍しい事に結婚後も解散せずに活動を続けてたりします。

 普通はPT内でカップルが出来ると何かと揉めるので解散したり、そうでなくても結婚したら冒険者引退する人が多いのでわりかし珍しい事だったりします。


 誰が一人だけあぶれたのか、名前を言うのは可哀相なので秘密です☆!



 ちなみに本件とは全く関係無い話ではありますが、ローナさんは“独身”です。 





「ねえ、私はそう思うんだけどどうかな?」 



「ちょ! ええ? あうーっと、……い、良いんじゃないかなぁ?」


 突然返答を求められたけど、メンバー全員適当に相づち打ってるだけなので話の内容なんて聞いてないのです。

 誰一人質問の内容なんて分らないのでこれまた適当に返事を返します。




「良い? 良いよね! だよねー! で、これがまたさぁー」


 一時間経過。


「って訳なのよー。 まさに私の為にある杖よね! ね! ね! 今まで一撃じゃ倒せなかったアイアンゴーレムも楽勝よー! スケルトンなんてダース単位で――」



「な、なあローナ姉さん。 俺達そろそろお(いとま)しようかと……」


「そうそうあねさん。 本当はまだまだ聞いてたい所だけどあたし達も用事があるんでそろそろ、ね?」



 さすがにエンドレスで続けられる自慢話にそろそろ精神力が尽きて耐えられなくなってきたので何とか帰ろうと何度目かの挑戦をしてみます。



「えー、用事って何さ? いいじゃん、奢るからさー。 “朝まで”飲もうよぅ」



 と、ここに来てのまさかの爆弾発言。



(おい、朝までとか言ってるぞ!?)


(無理無理無理無理!)


(しょうがねえ、あれを使うか……)


(あれね……、あねさん……荒れないと良いな……。 でも仕方ないわね)


 まさか朝まで自慢話に付き合える訳も無く、PTメンバーはローナさんに対して絶大な威力を誇る一言を告げようと一同は覚悟を決めます。



「いえ、あねさん。 最近クエストばかりだったので今日は久しぶりの宿なんです。 ……何が言いたいかと言うと、嫁と――」

「ば、ばか! 恥ずかしい事真顔で言おうとしないでよ!」



「………………ぎゃふんっ! ごめん、気が付かなかった……。 じゃ、じゃあ今日はこれでお開きにしようか」 



 と、PTメンバーが伝家の宝刀である『夫婦の時間がぁ……』発言をしたことで一気に気まずくなっちゃってローナさんはしょんぼりとしながらもお開き発言しました。


「お、おう。 悪いな」


「じゃローナ姉さん、また明日次の依頼なんにするか話し合おうぜ」


「あねさん、また明日です!」


「……おやすみ」


 つい今さっきまでキラッキラな目で楽しそうに話してた人とは思えない位にずーーんと沈んだ暗い笑顔で手を振ってくるローナさんに皆言葉少なに挨拶して足早に帰り支度をするのですが――


(あああ、なんかあたし罪悪感が凄まじいんですけど!)


(奇遇だな、俺もだ)


(だ、だれか……誰か姉さんに良い人を紹介してあげてー)


(ふむ……あの性格では厳しいな)



 ――そして一人残されたローナさん。


「うらやましくなんて無いもの…………アタシにはこの杖があるんだもの……。 ふーんだ! 店員さーん、このお酒おかわりー!」




◆◇◆◇◆



 と言う一幕が夜の町でひっそりと起こっていたのでした。



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