第55話 ファッションなのです
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「大変申し訳ありませんでした!!」
五分後、そこには耳を力無く垂れさせ、床に張り付かんばかりに小さくなって土下座するララエルさんの姿がありました。
サハラさんは自分の用事が杖を売ることだった事、それをアドニスさんに相談して手伝って貰った事、それで現在絶賛売り出し中の中堅冒険者を仲介して取引を円滑に進めて貰って今に至った事をララに全部説明したのでした。
その結果、ララエルさんはすぐにアドニスさんの元に駆け寄って日本人も真っ青な程の華麗な土下座を披露したのです。
「あ、ああ。 いや、まあ別にあれくらい良いけどよ……」
ララの土下座にアドニスさんは若干引きつつ――
「しっかしお前さんはあれだな、もう少し落ち着きってもんを覚えた方が良いな」
――と、あきれ顔で少し窘めます。
「ぅぅ……申し開きようもありません……」
そのアドニスさんの言葉にララはますますしょんぼりとしてしまい、耳を垂らしたまま縮こまってしまいました。
そんなララを見るに見かねてサハラさんは少し強引に話題を戻す事にします。
「まあまあ、とにかくそう言う訳で杖を買ってくれる人をアドニスさんに紹介して貰ったのですよ~」
勘違いとは言え、自分の為に本気で怒ってくれたララがしょんぼりしてるのはいたたまれないですからね。
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………………とは言え、実は剣抜いちゃったのはこの世界でも本当は大問題だったりします。
以前も抜いたけどアレは冒険者同士だったりでうやむやになっちゃってるのですが、町中で人に向かって武器を構えたり魔法を準備するのは普通に結構重い犯罪なのです!
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「え、ええ、そうだったのね。 ……所でどうして売る事にしちゃったの?」
ララとしては小柄なサハラさんが大きな杖を持って振り回されながら四苦八苦して居るのを見るのが好きだったので残念でなりません。
……それはもう本当に……本当の本当に心の底から残念で仕方が無いのです!
「う~ん、実は今売った事自体にはあんまり深い意味は無いんだけど……。 でも、これは前々から思ってた事なのですけど……お金……ね。 いつもララに渡してる金額じゃ足りて無いと思うのです。 それにコトさんに借金も返さなきゃだし、僕の杖が売れるなら売っちゃおうかな~なんて思ったのです」
「ええ!? そんな事の為に杖を売っちゃったの!? 壺の借金は私の責任よ! サハラに払って頂かなくても結構です! それにいざとなったら私の持ち物を売るから大丈夫だったのよ!」
サハラさんの話を聞いてララはむしろ腹が立ってしまいました。
まさかサハラさんがそんな事の為にミスリルの杖を投げ売ってしまったかと思うと悔しくてなりません。
その思いがやるせなくて、ララはついつい声を荒げてサハラさんへ八つ当りしてしまいました。
「ぅぅ、ごめんなさい。 でもねララ、僕にとってララはもう家族同然なのですよ。 だから僕は家族を助けたくて……じゃないか、ララだったら借金位すぐに解決出来ちゃいそうだもんね」
珍しくサハラさんに対して声を荒げたララに涙目になりつつもサハラさんはどうにかララに気持ちを分って貰いたくて、思いを言葉にしようと紡ぎます。
「え~と……え~と……あ、そうです! 手伝う、です! 僕は家族のララを手伝いたかったのです。 いつもいつも出会った時からず~~っとララには助け貰ってばっかりだしね。 で、手伝いが出来る方法があったからやったのです!」
精一杯考えてサハラさんはララに今の気持ちを伝えました。
でもそれに対してララは――
「手伝ってくれるのは嬉しいけど、けれどやっぱり杖は勿体ないし、今回の様な事の為に売るというのは駄目だったのよ。 それに、それこそ家族だと言うのなら生活費の事なんて気にしなくて良いのだしね」
――と、ついつい“家族”とサハラさんが言った所で満面の笑みで抱きしめてしまいそうになる衝動を鋼の意思で何とか抑えて苦言を伝えます。
「ぅ……うん、わかりました。 次からはちゃんとララに相談してからにします」
いつになく怒った顔のララに、ついにサハラさんは自分の思いつきでやった事は良い事では無かったと気が付いて反省します。
「もうやっちゃったものは仕方無いし、わかってくれれば良いの」
そう言って、ララは表情を和らげてサハラさんへ笑いかけてあげるのでした。
「さて、それじゃあとりあえず新しい杖を用意しないとね。 こないだ買った杖は正直ただの木の棒をそれっぽくしただけのまがい物だし」
「え、あれってまがい物だったのです!? ショックなのです……。 でも大丈夫、どうせ杖なんてファッションで持ってるだけなのであの格好良いい杖で良いのです。 むしろ買い物に行くのなら鞄とかリュックとか買った方が便利で良いかもです!」
“あははは~”っと笑いながらサハラさんはさらっとララにとっては衝撃の事実をあかしました。
「え……? あんな名家の家宝並の杖をファッションとして持ってたの? …………えー?」
ララは(そんな馬鹿な!?)と思いつつも、(そう言えばヒーラーで長杖使いなんて聞いた事無いわね)と思い至ったのですが(に、似合ってたから良いかな……)と思い、何とも複雑な表情で苦笑いするのが精一杯でした。
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そしてそんな二人のやり取りをお茶を飲みつつ黙って見守っててくれたアドニスさんはやっぱり良い人です。




