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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
カララの町 《取引編》
54/80

第54話 早合点




~~翌日~~



「ララ、今日は後でアドニスさんに会いに行くのだけれど、一緒に行って欲しいのです」


「アドニスの所? 分ったわ。 そもそもサハラが行くなら火の中ドワーフの村の中、どんな所へだって喜んで一緒に行くわ」


「やった~、ありがとうララ!」

(ふふふ、計画通りなのです! にしても、火の中水の中、じゃなくてドワーフの村の中って言うんだ……やっぱりエルフとドワーフって仲が悪いのかな~?)




 サハラさんは昨日約束した通りにギルドへと出掛ける予定なのですが、今日は是非ララも一緒に来て貰いたいのです。


 ただ、何時に来る様にとかそう言う話は何にも言ってなかった気がするので念の為午後になってから行く事にします。

 この世界ってどうにも時間にルーズなので困りものです。

 まあ、基本的には教会の鐘の音でしか時間が分からないですしね。




◆◇◆◇◆




~~午後~~



 所変わっていつものギルドのいつもの受付。


 そして当然いつもの様にアドニスさんの列はすいています。

 あんまり待たなくても話し掛けられるのでサハラさん達にとっては便利なんですけどね。




「こんにちは、アドニスさん」


「おう、待ってたよ。 ちょっと耳貸しな」


 サハラさんの挨拶に返事しつつアドニスさんはチョイチョイと指でこっち来いと合図しました。

 言われるがままにサハラさんは耳を寄せます。

 するとアドニスさんはララに聞こえない様に小声で話し掛けて来ました。



『例のアレの代金、もう渡せるがどうする? 隠して渡した方が良いのか?』



 これはアドニスさんに最初に話を持って行った時にサハラさんが“ララに内緒で”って言ったから気をつかってくれているのです。

 でもここまで来たらもう秘密にしなくても大丈夫だったりするのでサハラさんは普通に返事をします。



「いえ~、もう内緒にしなくて大丈夫です」


「そうか。 じゃあ、まあここじゃアレだし昨日の部屋に移動してくれ」


「わかりました~」


 さすがに大金なので周りの目があるカウンターじゃ手渡さない見たいです。



「え? え? なに? 何なの二人とも」


「ふふ~ん、もう少しだけ秘密なのです」



 そんな訳でサハラさんは不思議がるララの手を取って昨日の交渉部屋へ移動します。



・・・・・




 とりあえずアドニスさんが金貨を持ってくるまで“何か腑に落ちない”と言う態度のララと一緒に昨日見れなかった四つ目の鹿を見てその場はやり過ごす事にします。

 でも、サハラさんはララに鹿の事を聞こうと思って話しかけようとしたのですけど“四つ目の鹿は滅多に居ないのに剥製にするなんて、何て酷い事を!”とララぷりぷり怒りだしちゃったのでいまいち聞けませんでした。



「おう、待たせたな。 約束の金貨と端数の銀貨だ。 手数料はもう抜いてあるからそれは全部嬢ちゃんの分だ。 そこのテーブルで数えて良いぞ」


 そう言いながら金貨と銀貨の入った袋を手渡して来ます。

 ――その横でララが“金貨!!?”って驚いていたりします。




「はい、ありがとうございます。 じゃあ念の為数えさせて頂きますね~~っとっとっと!!」



 ひょいっと手渡された袋を受け取った瞬間サハラさんは危うく落としちゃいそうになってしまいました。



(さすが金貨です! 見た目より重いのです)



 ……気を取り直してテーブルで枚数確認します。

 ジャラジャラっと出して『にーしーろーやーとー』と数えて行きます。



「はい、確かに金貨二十三枚と銀貨二枚あります。 アドニスさんありがとう御座いました!」


 手数料が二割だったのでちょっと減ってます。

 と言うか手数料で二割は結構高いですね。

 でもまあ取引の仲介から保証までしてくれていると考えれば安いのかもしれません。




 とにかくこれで取引は完了です。

 後はコトさんへ壺の弁償代を払えばララの借金も無くなります!


(お金を返したらどうしましょ~? 残ったお金でどこかに家を借りましょうか。 それよりララに何かプレゼントでも買いましょうか!)


 なんて、憂いも晴れて上機嫌なサハラさんは今後の事にニコニコ笑顔で思いを馳せていたのですが――


「サハラ! こんな大金どうしたの? どうやって手に入れたの!?」


 ――ララが金貨を『バシッ!』と叩きつつサハラさんへ問い掛けます。



「ふっふっふ~♪ あんまり大きな声では言えないですけど、これは僕の青春(をかけて集めたお洒落装備)を売ったお金なのですよ~」




 ふっふっふとサハラさんは胸を張って自慢げに金貨をララに見せてそう言いました。

 言ったのですけど……




「な…………なんですって……? (青)春を売った……ですって……?」



「ぶふ! 違うし!! ララエルさん、ララエルさん、春じゃないよ! 青春だよ! なんかその間違いだと凄く意味が変わるのですよ!?」



 何だかものすっごい致命的な勘違いをしてしまったらしいララにサハラさんは急いで間違いを訂正しようと試みます。

 でもまあなんと言ってもそこは勘違いと早合点が得意なララエルさんです。

 サハラさんが訂正しようとした時にはすでに剣を抜きながらアドニスさんに詰め寄っていました!




「ァあアぁあ貴方!! 何て事をしたのですか! 今すぐ誰に売ったのか教えなさい!!」



「おおおぃ、待て待て待て!! お前すっげぇ勘違いしてるぞ!? ギルドが売春の斡旋なんてする訳ねえだろ!! て言うかそんなもん聞いてどうすんだよ!?」



「知れたことよ!」




『スカン!!』



 ララは手に持ってた剣を怒りにまかせて力一杯床に突き立てながらアドニスさんに凄みます。



「今すぐ抹殺してこの事実を無かった事にする為に決まってるわ!!」



 …………ララのあまりの怒りのせいで勢い余って、剣の三分の一位床に刺さっちゃってます。



「うお! じょ、嬢ちゃん! このおっかねえエルフをなんとかしてくれ!」



「ららららララエルさんららえるさん! さっきも言ったけど誤解なのですよ? 青春、青春って言ったのです! 要するにいつも持ってた杖の事だからね!?」



 サハラさんは今にもアドニスさんに掴み掛かりそうなララに後ろから抱きついて止めながらもう一度必死に訂正します。



「サハラ、すぐに済むからちょっと離れててね。 …………って、え? 杖?」



「そう! 杖です! 僕は青春をかけて集めた装備を売ったって言いたかったのですよ~」



「え? え? どう言う事? 杖売った? あれ? あの杖って家宝じゃ……? 集めたの? あれれ? 売っちゃったの?」


 訂正するサハラさんの言葉聞いてララはさらにこんがらがります。

 あの杖は家宝のはずでは……? とか、なんで売っちゃったの? とか次々と理解し難い事ばかりで思考が追い付かず首を傾げてしまいます。


「おう、そうだ。 嬢ちゃんが杖を売りたいって言うから買い手を紹介してやったんだよ! と、とにかくそう言う訳だから、その何気に魔法使おうとしてるのをやめてくれよ!」



 すでに意識はサハラさんの方へ向いているララではありますが、手には部屋ごと破壊出来そうな程の魔力を纏っていつでも魔法が発動出来る状態になっていました。 あぶないです。



「え、ええ……分ったわ……。 ……あの杖、売っちゃったんだ……」



「う、うん。 とにかく落ち着いて。 ララ、とりあえず一度深呼吸しよう、深呼吸。 はい、すー、はー、すー、はー」


 サハラさんは何故か杖を売った事に凄くショックを受けて虚ろな目になっちゃってるララに深呼吸を勧めて落ち着いて貰います。

 一応そんな状態でもララはサハラさんの勧めは聞くらしく、うわの空のままですが一緒に深呼吸をしてくれています。



 その後、サハラさんはすっかり意思消沈しちゃったララをとりあえずソファーに座らせて、それからララが突き刺した剣も回収し……ようとしたけど抜けなかったので部屋のオブジェと思う事にして諦めて、今回の事を色々と説明する事にするのでした。



















ボソッ………………はたして13歳が“春を売る”って意味を知っているのでしょうか……?

むしろこれはR15指定される言葉なのでは!?

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