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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
森の村 《神官潰し編》
49/80

第49話 地下の池

 ランタンの光を頼りに地下の川を奥へ奥へと進むこと早数十分、この辺りまで来ると日の光も全く差し込まないからでしょうけど苔も何にも生えていなくて寂しさを感じる風景が続いています。


 それ以外の出来事と言えば、ここへ来るまでの間に途中で二度程川が枝分かれしている場所がありました。

 そのどちらも逆Y字路になっていて、上流から流れてきた川が二本に分岐している形ですね。

 サハラさん達は上流に向かいたいので迷わず川の流れに逆らう方向を選んで進んで来ています。



 それからさらに一時間程進んだ所に少しだけ広い場所に出たので、リディさんは皆に休憩にする事を告げてその辺の岩に腰掛けます。

 距離としてはたいして歩いてはいないのですけど、サハラさんが疲れて元気が無くなってきちゃった事と、リディさん自身も不意に敵と遭遇するのに備えて気を張り詰めて来ていたのでここらで少し息抜きした方が良いかなと思っての事なのです。

 ただ幸いな事に今のところ一度も敵に出会う事無く来れています。


 幸いと言えばもう一つ、それはサハラさんの事なのですが昼間リディさんと一緒に村で行動していた時に村人が飼育していた小さな虫を見ただけで悲鳴を上げていたので、地下の虫に遭遇したら気絶しちゃうんじゃ無いかと心配していたのですけれど、これもやっぱり幸運な事に未だに一度も遭遇せずに来られていました。



 それでも、リディさんは今更だけど一応一言くらい忠告しておいた方が良いかなと思って言っておく事にしました。



「そうそう、サハラ。 今更ですけどこう言う洞窟とかには大きな虫が一杯居る事が時々あるから気をつけてね」




「え!? 大きな虫……ってどれ位……ですか?」


 るんるん気分で洞窟探検していたサハラさんでしたが、リディさんの一言で一瞬にして固まりながら恐る恐る聞き返しました。



「まあ、この辺りの森の浅い地域は深い所よりもかなり小さいから…………そうね、せいぜい一メートル位かしら?」


 本当はもっと大きなのも居るんですけど、リディさんはサハラさんがびっくりしない様に気を使って多少オブラートに包んで小さめに教えてあげます。






 …………小さめに教えてあげたのですが――





「ふふ~ん♪ ララ! 帰りましょう! すぐ帰りましょう! 僕は冒険者辞めてアリーさんのお店(第18話で登場)で働く事にします」

(無理無理無理! 無理なのです! そんな大型犬並の大きさの虫に出会ったらそれだけでショック死しちゃう自信あります! 正直言って冒険者を甘く見てました!!)



 と、少し位小さく言っただけではサハラさんには余り意味が無かったらしく、真っ青な顔になった挙げ句に冷や汗流しつつ引退宣言して百八十度方向転換して帰ろうとしだしてしまいました!




「「「えぇ!?」」」



「ちょっと貴方! そんなに虫嫌いなの!?」




 リディさんはサハラさんの予想以上の反応に焦ります。 




「え? どう言う事なのサッちゃん!?」




 コトさんに至ってはサハラさんが虫嫌いな事も知らないので、なんでいきなり引退すると言い出したのか訳も分らずに混乱状態です。



 でもコトさんと同じ様にサハラさんが昼間虫を見て悲鳴を上げた事を知らなかったララなのですが――



「良い考えね! そうしましょうサハラ! 私も冒険者なんて辞めて一緒に働くわ!」

(やったわ、最高ね! サハラがこんなPTに入るなんて言い出して心配してたけど良い方に転がったわ!)




「「ふぇえ!?」」



 ――そんな風にララは即座にサハラさんの発言に賛同してリディさんとコトさんに追い打ちをかけました。

 しかも言うが早いかララはすでにサハラさんの手を取り満面の笑みで帰路につこうとしだしちゃってます。



「え? えええ? ちょっと待って! 待って二人とも!」



 リディさんはせっかく仲間にしたヒーラーをこんな事でみすみす手放す訳には行かないので、ちょっと焦ってしまいつつも引き留める為にとりあえず話しかけます。


「ほ、ほら! えーと……冗談。 そう、冗談よ! 今までだって全然虫出て来てないじゃない? だからサハラ、大丈夫よ!」 

 と、口から出任せを言ったのですが、その途中でほんとに虫が居ない事に気が付きます。

(そう言えばほんとに虫居ないわね。 ワサワサとは言わないまでももっと居ても良いはずなのになんでかしら?)



「そ、そうなんですか? だ、騙してないのです?」



 そんな出任せを言うリディさんへ不安一杯な顔でサハラさんが聞き返すのですが――



「当たり前よ! 騙してないわ! 私が今までに嘘付いた事なんて有ったかしら!?」


 ――と言い切りました。

 出会って間もないのに今までに嘘付いたか付かなかったかなんて分る訳も無いのですが……。



「う、うん……そうだね。 ……ふ~。 も~、びっくりしましたよ~」

(まったく~、冗談だったなんて酷いです! 本気で町に引きこもろうかと思いましたよ~!)


 リディさんの勢いに押され、何故か納得してしまって心底ほっとした様にサハラさんが言いました。

 どうやら引き留める事に成功した様なのでリディさんも胸をなで下ろします。

 ただし、なんだか今の一瞬で精神力の大半をすり減らした気がするリディさんだったのでした。




 そんな二人を、と言うかリディさんをララは忌々しく見つめて――


(ク……! 虫除けの精霊魔法が裏目に出たわ!! でもサハラは虫が苦手なのね。 これからは気をつけましょう)


 ――などと胸に誓うのでした。



□ □ □

 ちなみにララはいつもヒッソリとサハラさんへ虫除けと体力アップ、それに遠距離攻撃避けの魔法を掛けて居たりします。

 何でかと言うと、出会ったばかりの頃にサハラさんが宿で寝てる時に蚊に襲われて寝苦しそうにしてたのでそれ以来ずっと掛けて居るのでした。

 それに体力アップは掛けないとサハラさんは数分でバテるので必須なのです!

 だからララと別行動の昼間はすぐバテてたんですね。

 でもそうやって甘やかしてるのでサハラさんに体力が全然付かないと言う悪循環にも陥ってたりするのは内緒です。



 そのお陰でララのマナ(MP)は常時大量に消費されていて、実は戦闘で魔法を使う分が殆ど残って無いのだけどそれはまだ誰も知らないお話です。〈ララ本人も気が付いて無いのです!〉

□ □ □





◆◇◆◇◆





 あわやPT解散の危機を乗り切った所からさらに九十分程進んだ所、そろそろ夕飯を食べて仮眠でもしようかと言う所だったのですが、不意に開けたホール状になっている池の様な場所にでました。


〈“開けた”と言ってもそれ程広い訳でも無く、大体学校のプール一個分程の広さでしょうか。 天井も少し高くなっていて三メートル位はありそうです。 ただ、池の深さは膝丈程で水の流れも出入り口付近以外は殆ど無いくらい穏やかになっています〉



 しかし先頭のリディさんは警戒姿勢をとりつつ皆に手振りで止る様に示しました。


「……皆注意して、奥に何かいるわ!」


 リディさんは武器に手を掛けつつ、小さく、ですが緊張した声音で告げます。

 その警告にコトさんとララは即座に武器を構えてリディさんの言った方向を観察します。



 ランタンの光ではホールの奥までは照らしきれません。

 薄暗い中で目を凝らして見ていると、ホールの奥の方で何やら黒っぽくて大きな塊が動いているのが見えました。


「あれは……どうやらここで正解みたいわね。 あれがベルモルサラマンドラよ」


 そうララが言って指さします。

 丁度反対側を向いている丸いシルエットのそいつもどうやらこちらに気が付いて居るらしく、のそのそとゆっくりこちら向かって方向転換している途中の様です。



「お~、あれが探してたモンスターですか~。 なんだか丸っこくて可愛いです。 でも凄く大きいね!」

(あれ狩っちゃうんだ。 ちょっと可哀相です……)




「あれがそうなの? 凄くのろいんだけど……、弱そうよ?」




「間違いないわ、あいつよ。 それとベルモルサラマンドラは私の里では若手が倒しに行く事になってるのよ。 それがどう言う事か分るわよね? 若手でも問題無い位弱いって事よ」

(全く、サハラを連れてきてる時点で気付いても良いとでしょうに。 私がサハラを危険なモンスターの所に連れてくる訳無いじゃない)



「そう言う事は最初に言って欲しかったわ。 まあ良いわ、サクッと倒して帰りましょう」



 そうこう話をしてる間ものそのそとそいつは方向転換に勤しみ、やっとこさ向きを変え終えてこちらに向かって歩き始めました。

 やっぱりのそのそとですけどね。


 でもそのベルモルサラマンドラを見てサハラさんは凄く気になる事に気が付いちゃいました。


「ねえララ、見間違いかもしれないけどちょっと気になる事が有るんだけど……。 あれ……リボン巻いてないかな?」


 そう、何故かサラマンドラの胴体にはピンクのリボンが巻かれていたのです。

 しかもちゃんと蝶々結びで!



「そうね……。 やっぱりサハラもあれはリボンに見えるわよね」



 ララも一目見た時から気にはなっていたのです。

 でもまさかリボンを巻いてるとも思えず、何なんだろうと思い悩んでいた所でした。

 しかし結局リボンに見えるそれは本当にリボンだったようでした。



(なんでリボンしてるんだろう?)



 サハラさんもララも首を傾げて悩むばかりです。

 全然理由が分りません。



 そんなリボンを巻いたそれは危機感の欠片も感じさせない暢気な顔をして今もこちらに向かってのそのそと近づいて来ています。



「二人とも、そんな事は今は置いておいて、そろそろ倒すわよ。 私が正面、コレットとララエルは左右から攻撃して、サハラはここで待ってて」



 リディさんはいくら考えても結論の出なさそうな事を考え込んでいる二人を現実に連れ戻して攻撃の手順を伝えます。


「了解です、お姉様!」


「そうね、分ったわ」


「が~ん、待ってるだけなんだ……」


 皆からの返事が来た事を確認してリディさんは行動を開始しました。

 サハラさんがショックを受けてるのはこの際スルーです!



「よし! じゃあカウントゼロで行くわよ。 三、二、一、ぜ……」

「待つのじゃ!!!」



「わひゃ~!」



 リディさんがまさに『ゼロ!』と言って飛びだそうとした瞬間背後から突然声をかけられました!

 ちなみに悲鳴はサハラさんです。



「誰だ!?」



 リディさんはサラマンドラの警戒をコトさんへ任せると手振りで示して、自分は声の元に向かって振り向き武器を構えます。

 そして、それよりも数段早くララは声が聞こえたのとほぼ同時にサハラさんの元へ走り寄って自分の後ろに匿って警戒姿勢を取ったのでした。



 声がした方向〈サハラさん達が入ってきたのと同じ入り口からなのですが〉に目を向けると、そこにはいつの間にか一人の小柄な人物がこちらを指さして居ました。

 ただし頭から足下まですっぽりと覆うローブの様な物を着ているので顔どころか性別や年齢すら分りません。






 その人物を無視する訳にも行かず、かと言って何者かも分らないのに攻撃も出来ず、ただ悪戯に時間だけが過ぎ去っていく中、一人サラマンドラだけがマイペースにのそのそと近づいて来ているのでありました。



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