第47話 原因&サハラさんの気配り
それからリディさん達はララから軽く原因の説明を聞きました。
説明の内容を考えてみて、その説が有りえそうだったので急ぎ村長さんを交えて話し合いをする事になったのでした。
と言っても『呪いよりかは多少可能性あるかも?』くらいの気持ちだったりします。
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ララがいったいどんな説明をしたのかと言いますと。
ララの故郷の『黒の森』でも時々同じ様な症状が出る事があるのですけど、それは飲み水に使っている川の上流に住む魔物が原因なのです。
川の上流には普段から『大王サンショウウオ』と言う魔物が住んでいるのですが、そのサンショウウオが長い時間を掛けて成長していくと『ベルモルサラマンドラ』と呼ばれる魔物に進化するのです。
そしてこの『ベルモルサラマンドラ』が大問題の原因なのです。
見た目は大きなウーパールーパーで可愛いのですが、体の表面を毒のある粘液で覆って守っているのです。
この毒が厄介な事に凄く強力な物で、しかも水に流れ出してしまうのです。
さらに困った事に流れ出してしまうのに溶けずに分解されないで下流に流れて言ってしまいます。
その水を飲むと今回の村人みたいに体調を崩しますし、濃度が濃くなると魚も捕れなくなるし野生動物も近づかなくなるしで近隣住民の死活問題に発展する大迷惑な魔物なんです。
でも、エルフ族は基本的に食べない生き物や攻撃してこない生き物は殺さないのでそのままなら無害な『大王サンショウウオ』は育って『ベルモルサラマンドラ』にならない限りは駆除しないで放っておくのです。
ちなみに、大きなウーパールーパーの“大きな”とは普通車くらいのサイズの事です!
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そんな訳で一行は場所を変え、今は村長邸の応接間で村長さんに調査終了の報告と結果の説明をしている所です。
「そうですか、そんなに悪化しているのですね……」
想像以上に悪い結果に村長さんの顔色が曇ります。
「ただし、一つだけ良い話もありますよ。 それを元に調査を進めれば、もしかしたらこの呪いの原因を特定する事が出来るかもしれないわね」
「な、なんですって!? 冒険者様! 原因がわかったのですか!?」
村長さんはリディさんから伝えられた村の現状に顔を青くして力無く椅子に座り込んでしまい、そのすぐ後に続けて伝えられた“原因が分るかもしれない”と言う情報に目を見開き一縷の望みを掛けて聞き返してきました。
「いえ、必ず私達の話で調べれば原因が分ると言う訳では無く、可能性があるのでギルドへ調査依頼を出した方が良いですよ。 と言う事です」
「そ、そうなのですか……。 あ、そうです! あなた様方に調査の依頼は出来ないでしょうか!?」
村長さんはリディさんの情報に一喜一憂して、そのすぐ後、良い事を思い付いたとばかりに調査依頼をしてきます。
「それは無理ね。 私達は明日の朝にはカララへ帰るわ」
ですがリディさんは素っ気ない態度で間髪入れずに断ってしまいます。
これは素早く冷たく断った方が後腐れ無く断りやすいので冒険者を続けている間に自然と身についた技です。
「そこを……そこを何とぞ! 何とぞお願いします! 我々を助けて下さい! お金なら何とかしますから!!」
しかし村長さんも必死に食い下がります。
何とか調査をして貰おうと深々と頭を下げてお願いしてきました。
今まで何の手掛かりも掴めずに、ただただ耐えていただけだったのですからそれも当然かもしれないですね。
その必死さに思う所があったのか、リディさんも少し考えてみます。
「やはり無理ね」
一分にも満たない程の考慮の後、リディさんは結局断りました。
何もリディさんも意地悪で断っている訳では無くて、水源地の調査と言うのは普通ならかなり大変な事なんです。
それこそ何日も森の中、山の中を歩き回ってやっと辿り付く、そんな場所にあるのが水源地なのですから!
森に慣れたララや冒険に慣れたリディさん達だけなら引き受けてもよかったのだけど、サハラさんを連れて水源地まで行くのは無理なんだろうな、と考えての事でした。
ふと、リディさんは自分達のPTを見て
(普通の森に入るのですら躊躇うBランクPTってどうなんだろう……)
と、一抹の不安を覚えてしまいましたが、首を振ってその考えを振り払います。
「水源地の調査なんて何日掛るか分らない物出来ないわね。 ましてこの村の水源がどこかなんて…………ん?」
そこまで言ってリディさんは一つ重要な事を見落としていた事に気が付きました。
「待って……この村って水は井戸でまかなってるわよね?」
そうです。
この村は井戸で生活しています。
少なくても今日見て回った範囲には小川すら有りませんでした。
井戸ではララの言っていた原因と食い違ってきます。
そんな風にリディさんが考え込んでいたら村長さんが『水源地、井戸? 井戸の事でしたら……』と話しかけて来ました。
「冒険者様、やはり水が怪しいのですか?」
「そうね。 だけど井戸だと少し話が変わってくるわ」
「それでしたら我が村の井戸は少々特殊でして――」
村長さんの説明によると、この村の井戸は地下の水脈から滲み出る水をくみ上げている訳では無くて、地下の川から直接水を引いてるとの事で井戸の底からその地下水脈に歩いて入っていけるらしいのです。
「へぇ、歩いてねぇ。 それで、奥は深いのかしら?」
「それは……なにぶん私も入った事が無い物でして分りません」
「そうなのね」
(さてどうしたものかしら。 地下水脈……地底の川ねぇ。 そんな所でサハラは大丈夫かしら? んー……むしろダンジョンへ入る前の練習に丁度良いかもしれないわね)
と、そこでリディさんは自分がまたしてもCランクPTですら暇つぶしで入る様な危険度の低い、ダンジョンとも呼べない様な場所へ入るのに悩んでいる自分に気が付いてしまい、在りし日の栄光の日々と比べてちょっと涙が出そうになってしまいました。
〈初めての所なのにCランクPTが暇つぶしで入る様な場所って決めつけてるのは有り体に言えば、リディさんの経験と勘です! それとこの辺りの洞窟やダンジョンを調査した冒険者が持ち帰った生息モンスター情報を調べてきてるからですね〉
「分りました。 少し調査してみましょう」
悩んだ末、リディさんはサハラさんの経験稼ぎの為に地下水脈へ入ってみる事に決めました。
「おお! ありがとう御座います!!」
村長さんもリディさんの言葉を聞いてパアッと顔を明るくします。
「ただし、奥が深い様ならすぐに引き返してきますので、その時は後日正式にギルドへ依頼して下さい」
「ええ、分っております。 それで十分です」
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そのまま、リディさんと村長さんは水源地調査の依頼料や成功報酬の事、それと現地の地下水脈についての危険性や何かモンスターが居るのかと言う情報などを話し合い始めました。
その話合いの間に他の三人は調査の為の準備をしておく事になりました。
井戸に降りる為のロープとか食料とかそう言う物の用意ですね。
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では買い出しに行きましょうか、と言う段階になってサハラさんはふと思い付いてしまいます。
(そうだ! リディさん達の話し合いって大変そうだし、飲み物でも出してあげましょう!)
と、そうサハラさんは思い立って、無駄に気配り精神を披露するべく自分の荷物の中から水筒と木のコップを二つ取り出して、水を注いでからリディさんと村長さんへ差し出しました。
「あら、気が利くわね。 丁度喉が渇いてたから助かるわ」
リディさんはサハラさんからコップを受け取り一口水を飲みます。
その水はヒンヤリと程良く冷えていて美味しい水だったのでそのまま残りも一気に飲み干してしまいました。
「サハラも【クール】が掛った水筒持ってたのね。 冷たくて美味しいわ。 あ、もう一杯お願いね」
リディさんは空になったコップを手渡しつつ何気なく言いました。
もう季節は夏ですので、いくら森の中とは言ってもそれなりに暑いので、冷たい水が心地よく染み渡ります。
「いえ、持ってないですよ~。 さっきリディさんとララが話し合ってる間に井戸で新しい水に入れ替えておいたのです! ぬるい水は美味しくないですもんね~」
気が利くでしょ? と言いたげな顔で胸を張って、どんなもんですか! と言う態度でサハラさんは二杯目の水をリディさんへ手渡しました。
「へー、そうなのね。 ゴクゴク………ぶふ!!『ぎゃー』井戸水ですって!?」
サハラさんの説明を何気なく聞き流しながら水を口に含み、飲み込もうとして聞き捨てならない衝撃の事実に吹き出してしまいました。
ちなみにリディさんの目の前に居た水筒を持ったままのサハラさんはびしょ濡れに……。
「サ……サ……サハラサン!? 今まさに汚染されてそうなんで調査に行きましょうって話し合ってる井戸の水なのこれ!?」
「ぅぅぅ、酷いよぅ……。 なんかデジャブ……。 …………って、あの井戸駄目だったの!? ごめんなさい、その話は聞いてなかったみたいなのです」
そうです。 サハラさんはまさにララが“水が怪しい”って話をしている時に井戸で水を汲んでいたのでした。
「ま、まあ良いわ。 私の体調が悪くなったら治してね?」
リディさんは何だかもう怒るのも馬鹿らしく思えて来たのでそれで良い事にするのでした。
ただ、無意識でなのですけれど、左手は角を撫でる癖が出ちゃっていたりします。
「それはもうすぐにでも~!」
そんなリディさんのジト目に耐えきれなくなったサハラさんは返事をするが早いか、急いで調査の準備に向かうのでした。




