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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
カララの町 《神官潰し編》
36/80

第36話 悪どいコトさん


「あー、笑った笑ったっとー。 さて、二人のやり取りを見てるのも面白いんだけど、そろそろわたし達も仲間に入れて貰いますねー」


 さんざん地面を叩きまくりながら大笑いして居たコトさんですが、急に真面目な顔になってそう告げました。


 でも、ララとしてはプライドをかなぐり捨てて大恥まで掻きつつ、なんとかサハラさんの説得に成功しそうになった所なので、ここコトさんに割って入ってこられてこれ以上話をややこしくして欲しくありません。



「いいえ、これは私とサハラの問題よ。 貴方達は少し黙っていなさい」


 キッと鋭い視線でララは二人を睨み牽制します。


 しかし、そんな凍える様な視線を受けて尚も平然とコトさんは話を続けてきます。


「あらら、嫌われてるみたいですねー。 それじゃあ一つだけ聞いてね。 これだけ解決したらわたし達は立ち去りますし、二度と二人の前には現れない事にするよー」


「…………」


 ニヤッと不敵に笑うコトさんと無言で睨み続けるララ。


「否定が来ないって事は聞いて貰えるのかな? じゃ続けるねー。 その前に確認なんだけど、貴方はフォレストエルフだよね? しかもその中でも最古にして至高の存在として知られる、気高き黒の森のエルフだと思うんだけど合ってるよね?」


 コトさんは小さな翼をパタパタさせながら小首を傾げてララに聞きます。



「ええ、そうよ。 私はもっとも誇り高き黒の森・シルフィのララエルよ。 それがどうかしたのかしら?」



「うん、それを聞けて安心しましたよ。 そして貴方はあたし達とPTが組みたく無いと……ふむふむ、わかりました。 それは良いでしょう。 ……でもそうなると困りましたねー」



 そこでコトさんはあからさまに一度話を区切って“ふーやれやれ”ってポーズを取ります。

 その行動にララがイラッとさせられた所でまた続きを話はじめした。



「あたし達はさっきサっちゃんを……ああ、サハラちゃんの事ね。 その子を危険な暴漢から助けた善良な(いち)冒険者な訳なのですよー。 そんなサっちゃんの命の恩人とでも言えるあたし達を貴方は突然すっごく危険な魔法で攻撃してきましたよね?」



「そ……それはごめんなさい」


 コトさんから言い逃れしようの無い事実を指摘されてララは少し(ひる)みます。

 それを気にする事も無くコトさんはさらに続けます。



「いーえー、貴方もサっちゃんを心配しての事だったんだろうし、“殺されそうになった事”は不幸な事故だったとして水に流しましょう。 たとえものすごーく危ない魔法だったとしても……ね」



「ハイ、スミマセン。 アリガトウゴザイマス」


 たった二言でララは完全に勢いを止められてしまい“しゅん”と小さくなります。


 コトさんはわざと間を長く引き延ばし、澄し顔でララに威圧感を与えながらまだ続けます。



「いいんです、いいんです。 誰にだって間違いはありますからね。 こっちは死ぬかも知れなかったとは言え……ね。 さ、前置きはこれ位にして本題に移りましょうか」



「え!? これが本題じゃなかったの?」


 ララはびっくりしますがコトさんは一切をスルーして話します。


「でね、さっきの貴方の攻撃なんだけどね。 あれ、殺されそうになった事は水に流すけどもね、貴方が壊した壺は水に流せないんだよねー」



 コトさんはニッコリと優しく微笑んでそう告げます。

 それはこんなタイミングで無ければまさしく天使に見えたであろう微笑みでした。



「つ、壺? ごめんなさい! 弁償します。 えっと……お幾らですか?」


 またまた言い逃れ出来ない問題に、ララはしどろもどろになりながら謝ります。



「弁償は良いんだけど、あの壺ねー。 実はとあるダンジョンから持ってこないと手に入らない貴重品なんだよー。 まあ、お金で払ってくれても良いんだけど、払えるかなー? 安く見積もっても金貨八枚はするんだよね」

〈約四百万円です! 高い!



「き……金貨八枚ですって!? え……えっと、分割払いでも良いかしら……?」

(なんて事なのよ! 宿代にも困ってるのにそんなお金払えっこないわ!)


 予想外に高額な請求にララはびっくりです。

 貯金なんて概念の無い一般的なエルフさんには払える訳が無い金額なのです。

〈ちなみにコトさんは殆どのエルフ族が貯金をしないのを知っていてこんな事を言っています〉




「冒険者同士で分割払いでも良いよって言う人は居ないと思うなー。 あ、でもPTメンバーなら分割でも問題無いですよー?」



「ぅぐ」

(く……嵌められたわ! こうなったらいっその事サハラを抱えて逃げましょうか……)


 そんなララの心中などお見通しのコトさんはさらに追い打ちをかけます。



「いやー、貴方が誇り高い黒の森のエルフ様で良かったですよ。 そこいらの誇りもヘッタクレも無い様な恥知らずだったら踏み倒そうとしたり逃げようとしたりしますもん」



「え……ええ」

(……見透かされてるわ。 それに森の名前を出されたら逃げられないわ……。 サハラ、ごめんね)



 すごく気乗りはしないし、不吉な二つ名が付いてるPTになんて一切関わり合いたくは無いけれど、こうなってしまっては他に手がありません。


「わ、わかりました……。 借金を返すまでPTを組みましょう……」


 もうすっかり意気消沈して耳もぺったり垂れちゃってるララが消え入りそうな声でコトさんに呟きます。


「いえいえ! そんな無理に入らなくて大丈夫ですよー?」


 またしても天使の微笑みをたたえながら、コトさんは悪魔の如き意地悪をします。


「くぅぅぅ! ……もう!!  入りたいんです! 是非お二人のPTに入れて下さい! お願いします!」


 ララは悔しさのあまり、一度思いっきり地面を蹴飛ばして、それからせめてもの抵抗にコトさんを睨み付けながら言い放ちました。

 その視線を受けて尚コトさんは優しく微笑み返すのでした。





*・*・*・*・*





 そんなコトさんとララのやり取りを見ていたサハラさんとリディさんは、あんまりな出来事に口を挟む事も出来ずに終始無言を貫き通します。


 そして全てが終わった後、それぞれの感想を抱くのでした……。




(コ……コトさん悪どいです! まさにヤっちゃんです! ヤっちゃんがいます! あれはまさにワイン持って体当たりして弁償を迫るヤっちゃんさんの手口なのですよ!)




(コレット、恐ろしい子! これからは少し優しく接しよう。 うん)



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