第35話 焦るララエルさん
「サハラ、それはダメよ」
サハラさんが状況の説明を終えた時のララの第一声がこれです。
事前の予想通りですね。
「え~、なんでダメなのかな?」
それでも食い下がるサハラさん。
「そもそも、どうしてエリック達じゃなくて彼女達となの?」
ララはビシッとリディさん達を指差して、ちょっと怒り気味にサハラさんへ問いかけます。
(だって、あれはBランクPTの『神官潰し』じゃないのよ! 今回は助けてくれたみたいけど絶対に裏があるに決まってるわ!)
と、そもそもララの中でリディさん達の評価は地の底なのです。
しかも実際にリディさん達には思惑があるのでララの決めつけもあながち間違いでも無い所がまたいたたまれない所です。
「うぅ……それって答え辛いのですけど……」
(む~、疑問を質問で返されちゃった……。 結構照れる理由だから出来れば言いたくなかったのですけど)
サハラさんはちょっと照れて口ごもります。
「く……そんな顔したって……ダメな物はダメですからね!」
(ぅぅぅ、髪の毛を指でくるくるしてるし、ほんのり頬を染めてチラッチラッってこっち伺うし……これは反則よ! 危うく可愛すぎて抱きしめちゃう所だったわ)
ララがそんなことで葛藤してるとは思いもよらず、サハラさんはサハラさんで多少勘違いしつつ悩んでます。
(う~ん、ララが無表情でじーーっと睨むよ~。 怒ってるみたいね……素直に答えないとダメみたいね……。 でも、答えたらもっと怒りそうなきもします)
でも、じーっと目線で訴えかけてくるのに負けて、サハラさんは仕方無く理由を白状する事にしました。
「えっとね、たぶんララが思ってる事と違うと思うんだけどね。 あのね、怒らないでね?」
「大丈夫よ。 私がサハラに怒る訳無いじゃ無いの」
(それに私は気が凄く長いですしね! ふふふ、おどおどしてる姿も可愛いわね。 っていけないわ! 危うくニヤけちゃう所だったわ)
それを聞いてサハラさんもやっと安心します。
〈ちなみにララは気が短いエルフ族の中でも特に気が短い方だったりします〉
「じゃあ、まずは先にエリックさん達じゃない理由を正直に言うね」
サハラさんは深呼吸してから意を決して話し始めました。
「それは……残念ながらエリックさん達は人族なのです!」
「…………ん? どう言う事かしら?」
(ん~? ほんとにどう言う事なんだろう? サハラも人族なんだし全然問題ないじゃない)
ララは本気で意味が分らなくて悩んでしまいます。
人族が亜人族を意味も無く毛嫌いする事があるのは知っていますが、人族を嫌いな人族なんてララは聞いた事が無いし、サハラさんも人族を嫌っている素振りは無かったしで、やっぱり良く分らないので悩んでしまいます。
〈種として人族の事が嫌いな人族も、ララが聞いた事無いだけで普通にいるのでしょうけどね〉
「でね。 つぎにリディさん達の事なんだけどね。 なんとリディさんには角があるんですよ! そしてコトさんには翼があるのです! すっごく可愛いのです! だから一緒にPT組んでみたいのですよ!」
サハラさんは、いっそ清々しい程の自信と情熱に彩られた顔で言い放ちました!
――後ろでコトさんが大爆笑しながら壁叩いてたりもします。 普段はわりかし“つんけん”してるリディさんですら必死に笑いを堪えてます。
「…………」
(えっと……サハラは何を言いたかったのかな? たしかあの獣人と亜人には角や翼が有ると……たしかにあるわね。 で、エリック達には無いと……そうね、人族ですもの無いわよね。 そしてサハラはすっごく可愛いと言って、だから一緒にPTを組むと言ったのね……………え!!?)
「バカーーー!」
ララはサハラさんの言った内容を理解した瞬間、つい今さっき怒らないって約束したばっかりなのもほっぽり出して怒ってしまいます。
(が~~ん、ララが怒った。 それにバカって言われた……。 ぅぅぅ、酷いよ~)
「サハラ! パーティーを何だと思ってるのよ!」
ララは口から火を吹きそうな勢いで怒ります。 さっき襲ってきた人達よりおっかないです。
「ぅ~、そんなに怒らなくても~……」
サハラさんは予想以上にララが怒ったのでびっくりして涙目になっちゃってるけど、帽子を引っ張ってばれない様に隠して少しだけ抗議します。
「冒険者にとってPTは生死に関わる凄く重要な問題なのよ! それに…………って」
(あれ!? もしかしてサハラ泣いちゃってるの!? ま……まずいわ! ちょっときつく言い過ぎたわ! ど、どうしましょうどうしましょう、うーん、どうしましょう!)
帽子で顔を隠しては居るけれど、声がちょっとだけ泣き声になってたのでララにもばれちゃいました。
「えっと、泣かないで……PTがダメって言ってる訳じゃないのよ? んー、そうね……えーと…………あ、そうだわ! PTを諦めてくれるなら私の里に連れて行ってあげるわ。 そうよ、それが良いわ、そうしましょうよ」
ララはあんまりにも焦ったせいで、唐突に何の脈絡も無くエルフの里へ行く提案をしちゃいました。 だけど、ピクッとサハラさんが反応したのを見逃しませんでした。
(も、もう一押し?)
「わかったわ! サハラがそんなに角と翼が好きなのなら…………私がつけるわよ!」
「ラ、ララがつけるの!?」
(うえぇぇえ? な、なんで!?)
「つ、つけるわよ!」
(あ、あれれ? 何だかおかしな方向に話がいってる気がするわ……)
……正直もうララも自分が何言ってるか分ってないです。
「「ブフ! あーっはっはっは! も、もう無理! 角! フフフフフ! つ、翼つけるって! ひーっひっひ!」」
なんとか声を潜めて様子を伺っていたリディさんとコトさんですが、プライドがとにかく高いと言うエルフが焦った上に妙な事を口走りまくるので、とうとう我慢の限界を超えて二人は大笑いしながら服が汚れるのもお構いなしにうずくまってバッシバッシと地面を叩きまくります。
ちなみに、その笑い声で我に返ったララが耳の先まで真っ赤にしながらプルプルふるえてたりもします。




