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森のエルフは過保護さん  作者: rurura
カララの町 《雑用編》
29/80

第29話 エリックさんのお誘い

 ※ ※ ※ ※



 ララ、エリックさん、チャスさんの三人は野次馬に混ざってサハラさんの治療を見学していました。




「すげぇ……チャス、気が付いたか? あのお姫さん、触媒を何も使ってないぞ」



「そ、そう言えばそうっすね。 って事はあの子、司教クラスの腕前って事っすか……」



「だな。 しかしこいつは不味いよな……。 おいララエル、今夜酒場に来いよ。 あのお姫さんも一緒に連れてさ」


「え、サハラも連れて行くの? どうして?」



「まあなんだ、ちょっと重要な話があるんだ。 必ず今日来いよ」



「分ったわ。 ……あ、サハラ!」




 ララはエリックさんと話していたのですが、サハラさんがふらついた様子が見えたので急いで駆け寄って支えてあげます。



 ※ ※ ※ ※



「さ、サハラ大丈夫!? 掴まって」



「ララ、ありがとうです」



「それにしても治って良かったです」

(う~ん、MPが足りなくて魔法が三回しか使えないみたい……すんごく疲れました)


 とは言え、何とか治せたので一安心です。


「それじゃあ僕は行きますね」



 予想よりも疲れたので早く帰って休もうと思い、アドニスさん達にお別れを告げつつ立ち上がります。

 すると相棒さんが慌てて駆け寄ってきて帰ろうとしているサハラさんの手を取って呼び止めました。



「あんた、ちょっと待ってくれ! この礼は必ずする。 君は仲間の命の恩人だ、ありがとう」



「そんな大げさですよ~。 それに困ってる時はお互い様です」


 ほんとは疲れたから早く帰りたいサハラさんなのですけど、ここは一つ笑顔でにっこり大人の対応です。



 でもそんなサハラさんの気持ちもなんのその、相棒さんはその後も何度も何度も「ありがとう! ありがとう!」と言って帰らせてくれません。


 あんまりにも感謝されてしまってサハラさんは逆に困ってしまいます。 しかも疲れてるから早く帰りたいですしね。

 見るに見かねたララが強引に間に割って入ってくれて、それでやっと相棒さんも気が付いてくれて「あぁぁ、引き止めちまってわるい。 また後日改めて出直すな」と言って解放して貰えました。


「じゃ、じゃあ今度こそ……」




「嬢ちゃん、驚いたよ。 まさかそこまで神聖魔法が巧みに扱えるとは思わなかったよ」



 と、今度はアドニスさんが話しかけて来ちゃってサハラさんは帰るタイミングを逃しちゃいました。 



「ふふ~ん♪ だから最初に言ったじゃ無いですか。 僕は回復魔法って得意なんです!」


 でもそこはそれ、褒められたサハラさんはまたまた調子に乗って腰に手を当て胸を張り威張ったポーズを取って言い切りました。



「ああ、確かに言ってたな。 だが悪かったな、嬢ちゃんがこんなに神聖魔法が使えるなら他にもっと良いクエストを勧めるべきだったな」


 この町はほんとうに神聖魔法使い(ヒーラー)が不足してるので、そう言った系統の依頼はまさに引く手数多なのです。


 アドニスさんはそう言いつつ、威張ってるサハラさんの頭を撫でてあげます。

〈ちなみにサハラさんお気に入りの魔女風とんがり帽子は顎紐を結んで背中側に垂らしてあるので邪魔にはなりません。 屋内だもんね〉




「いえいえ~、薬草取りもポーション作りも楽しいから大好きですよ~」




「はは、ほんと嬢ちゃんは変わってるなー。 まあそれなら良いんだけどな」



「ではでは~、ちょっと疲れたので今日は帰りますね」



「おう、ギルドで死人が出るのを防いでくれて俺からも礼を言うぜ。 ありがとな! それと、おつかれさん」



「さっきも言ったのですけど、困った時はお互い様なのです。 そんな訳でまた来ますね~」



 三度目の正直でサハラさんはやっと本当に解放して貰えました。

 そんな訳でララと二人、のんびりと宿屋へ向かって歩き出すのでした。

 しかし、サハラさん達が去った後、一部始終を目撃していた者達はみな急いで行動を開始します。

 仲間の元に向かう者、ギルドスタッフにサハラさんの情報を詰め寄る者達等々、その重要性に気付た者が我先にと行動を開始するのでした。






 そこかしこで小声で話し合ってる内容を密かに盗み聞き、エリックさんとチャスさんは大きく溜息を吐きます。



「予想通りだな」


「っすねー。 このままだとあの子の争奪戦になるっすね」


「全く……こんな場所であんな高度な神聖魔法使うなんて世間知らずにも程があるな」



「なんせ保護者があの(あね)さんっすからね」



「それもそうだな」


 エリックさんはサハラさんの横に立つまだ若いエルフの姿を思い起こし、妙に納得するのでした。




◆◇◆◇◆




「はぅぁ~、やっと部屋に帰って来れました。 それにしても、今日は疲れたね~」



 部屋に着くなりサハラさんは「とう!」と帽子をベッドに投げ出しながら自分も一緒に倒れ込んで「む~~っ」って伸びをします。



「ほんと、今日は色々あったわね。 何よりポーション作りが疲れたわ……」


 実はララ的にはギルドでの騒ぎよりもポーション作りの方が疲労のメインだったりするのです。


(う~ん、ポーション作りってララの性に全然合わないんだね~。 僕は楽しかったんだけどララがそんなに苦手ならあんまり行かない方が良さそうだね)



「あ、そうそうサハラ。 さっきエリック達に夜二人で酒場へ来るようにって呼ばれたんだけど、どう? 疲れたなら行かなくても良いわよ」



「え、そうなんだ。 実は酒場って一度行ってみたかったんです!」



(酒場・・・良いですよね! 居酒屋さんじゃないんですよ? どんな所なんだろ~、ワクワクです)

〈注:サハラさんは居酒屋も一度も行った事ありません〉



 ファンタジーの定番である酒場です! そんな所へ行けるとあってはサハラさんに断る理由も無く、まだ見ぬ店内を想像してさっそく期待に胸を膨らませるのでした。




「サハラ、なんだか期待してる所悪いんだけど、酒場って柄が悪いしうるさいしタバコや料理の煙で煙いし良い所じゃないわよ?」



「え~、冒険者がたむろする酒場のマスターっとかって格好良くて憧れるじゃないですか」



 サハラさんはキラキラと目を輝かせてダンディーなおじ様を想像してさらに期待を膨らませちゃいます。



「そうかなぁ? 確か普通の樽体型の中年だった気がするのだけれど」

(サハラはいったいどんな店主を期待してるのかしら……)




「でね、そう言う訳だから夕飯は酒場で食べましょう」



「は~い、わかりました」



「じゃあとりあえずシャワーとか浴びて来ちゃって準備しちゃいましょうね」




 そんなこんなでサハラさんとララはエリックさん達との約束の時間までのんびり過ごすのでした。



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