第28話 回復魔法!
ほんの少しだけ時間が戻ります。
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「ねえララ、あの人大丈夫かな?」
サハラさんは怪我か病気なのか、隣の受付で苦しんでる人を気に掛けます。
受付の女性や相棒さんも心配してるし、やっぱりほっとくのは酷い様な気がしちゃいます。
「どうかしら、でも本人が大丈夫って言ってるし気にしなくて良いと思うわよ?」
ララとしては何事も自己責任な冒険者の事を心配するより、むしろサハラさんが病気でもうつされでもしないかとそっちの方が心配で気が気では無いのです。
それに、教会や治療院へ行ってお金を払えば治療は受けられますしね。
「そうなのかな~」
と、なおも気にするサハラさんの手を引いてララはギルドから立ち去ろうとします。
酷い様ですけどこのままここに居たら巻き込まれちゃいそうな気がしたので一刻も早く帰りたかったのです。
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「キャ……キャー!」
「おい! しっかりしろ、おい!」
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「ど、どうしたのかな……」
丁度サハラさんは手を引かれていたので見逃してしまったのですけど、どうやらさっきの人が倒れたようです。
「ねえララ、ちょっと待って~」
「大丈夫よ。 これだけ人が居るんだからこの人達に任せましょう」
サハラさんが不安げな声を掛けてきましたが、ララはここは気にせず進んだ方が良いと判断して歩き続けます。
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「ちくしょう! おい! 誰かヒーラーはいねえのか!? 助けてくれ!」
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「ララ! 行かなきゃ。 今ここに居るヒーラーは僕だけみたいだから」
サハラさんは切羽詰まった声に応える為に向かおうと決めて、そっとララの手をほどいて受付に戻っていきます。
「そ、そんな……サハラが行かなくても良いじゃ無い。 あいつが病気だったらうつされちゃうかもしれないし……」
ララは出来ればこの場から立ち去った方が良いと思ったので少し強引にサハラさんの手を引っ張っていたのですけど、予想外にしっかりとした意思で助けに行くと言ってララの手から離れて行ってしまいました。
「厄介事には関わらない方が良いのに……」
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「は~い! あ、ちょっとそこ通して下さいね~。 ありがとうです」
サハラさんは野次馬を掻き分けて輪の中心へ向かいます。
それ程一杯の人が居る訳じゃ無いのですけれど、皆がみんなガタイが良い冒険者なので通して貰うのも一苦労なのです。
小さな隙間を見つけて半ば無理矢理に通り抜けて、やっとどう言う状況なのか見れる場所まで来れました。
横向きに倒れて血を吐いてる人と、その左右を挟む様に相棒さんと受付の女性が座っていて、さらに頭側にアドニスさんが居ます。
「ぎゃーぅ、血です!!」
血を見た瞬間“フッ”と気が遠のき掛けましたが何とか踏み止まれました。
やっぱりゲームと違って生で見る血は怖いものです。
それでもサハラさんは何とか気力を振り絞って助けを呼んでた相棒さんとアドニスさんの間に移動しました。
「なんだお前は! 俺が呼んだのはヒーラーだ!」
切羽詰まってる相棒さんはサハラさんを見るなり烈火の如く怒り出しちゃいました。
――と言うのも、神聖魔法と言うのは先天的な魔法適正は必要ないのですけど、その代りとも言える程習得するのが面倒な魔法なのです。 なので多少なりとも役に立つレベルで使える様になるのは若くても二十代と言うのが常識で、その状態まで行けば教会の信徒なら助祭か司教になってる程の使い手なのです。
〈神聖魔法って言う位だから基本的には教会で習う聖属性魔法です。 でも、サハラさんのはただのゲームのスキルなので教会とか関係無いのですけどね〉
それなのに出て来たのは見るからに若い少女だったので、相棒さんが今にも掴み掛からんばかりの剣幕で怒鳴りつけちゃったのも無理からぬ話なのかもしれません。
「嬢ちゃん、すまねえが今は彼の言う通りだ。 ちょっと離れててくれるかい?」
アドニスさんはこんな状態でも意外に優しくそう言ってくれました。
彼にしてもサハラさんが回復魔法の使い手だと言うのを忘れている訳では無いのです。
でも、さすがに十代前半ではまだかすり傷程度ですら治せるか怪しい所だろうと思っているのでした。
「ちょっと待って下さい、この人すっごく苦しそうです。 すぐ治療した方が良さそうです。 任せて下さい」
相棒さんとアドニスさんの剣幕に少し怯んだけど、倒れた方の顔色を見るにそれどころじゃ無さそうだったのでサハラさんは何とか踏みとどまります。
〈ちなみにアドニスさんは別に睨んでないです。 元々顔が怖いだけですね〉
「何だと? お前が治療なんて出来んのかよ!」
相棒さんがまた食ってかかります。
「はい、回復魔法は(たぶん)使えます! 少し集中するのでご協力お願いしますね」
口では自信有り気に話しているのだけど、実は人の怪我とかを治せるのか一度も試した事無いのでかなり緊張してます。 握った手に変な汗掻いてますしね。
「…………そうか、分った。 嬢ちゃん、頼んだぞ」
信頼してくれたのかはわからないですけど、それでもアドニスさんはサハラさんに任せてくれました。
「早くしろよ! どうせ出来ないんだろ!?」
相棒さんがまたまた短気に怒ってくるけど、この人も仲間が心配で気が立ってるんだろうし、しょうがない……のかも。
「大丈夫、全力で治療しますのでどうか落ち着いて下さいです」
そう言ってサハラさんは魔法を使う為に精神を集中させます。
(……とは言ったけど、回復魔法って二つしか使えないんだよね。 治せるのかな~? とりあえず頑張ってみましょうか!)
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野次馬達と一緒の場所でララはサハラさんの事をヤキモキしながら見守って居ると、後ろから見知った人物に話しかけられました。
「よう、ララエル」
今しがた魔物の討伐クエストを終えて帰ってきたばかりのエリックさん達がギルドの騒ぎを訝しみながら話掛けて来ました。
「……エリック」
「ん? どうかしたのか?」
こんな騒ぎにララが参加しているのがエリックさんには意外に思えました。 何故参加してるのかは大体予想は付いているのですが……。
「それが……サハラがそこで倒れてる奴を治療しに行っちゃったのよ」
「あー、そう言えばあの姫様、回復魔法つかえるんだったな。 よしチャス、見て行こうぜ」
「ういっす。 あの子のお手並み拝見っすね」
二人は、ララの心配なんてそっちのけであの小さな女の子の魔法に興味津々です。 そんな反応にララは「えー……」って顔してたりもします。
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(う~ん、怪我かな? 病気かな? 怪我なら【回復】だけで良いんだけど……良くわかんないから【浄化】も掛けておけば良いよね!)
「よし、決めました! じゃあ始めます」
まずは精神を集中させて魔法の効果をイメージします。
何となくその方がしっかり発動出来そうな気がするってだけなんですけどね。
どんな魔法かちゃんとイメージ出来たら次は目標を決めて、マナを込めて、いざ発動です!
「【浄化】!」
対象者の体がエメラルド色に一瞬光って何かが抜け出て行く様に見えました。
その後すぐ、みるみるうちに顔色が良くなって来ました。
(ふふーん♪ やっぱり毒か病気になってたみたい。 よし、次は~っと)
「次は、【回復】です!」
今度は対象者の体に“はらはら”と光の雪が舞い降ります。
(けっ、結構疲れるかも……でも、最後に念のためもう一度!)
「もっかい【回復】です!」
二度目の【回復】で倒れた男の人が小さく呻きました。 どうやら気が付いたみたいです。
「ぅぅ……んぁ? おおぅ、皆どうしたんだ?」
男性はまるで昼寝から目覚めたかの様にすっきりした顔で起き上がって、自分の周りに人だかりがある事に驚いたのでした。
「お、おま……無事なのか?」
相棒さんはさっきまでまさに死にかけてたのにすっかり元気になった男性を涙ぐみながら見つめています。
「え? ああ、そう言えばさっきまですげー調子悪かったのにな、治ったみたいぜ?」
「ま、マジか!? 良かった……良かったなー!」
相棒さんはついに感極まって抱きつきながら泣き出してしまいました。 抱きつかれた男性は状況が良く分っていないらしく面食らって混乱してるみたいです。
事ここに至り、ザワザワと野次馬達にも動揺が広がり出しました。
男性の体調が完全に治ってるのを見て、サハラさんがやった事の凄さに気が付き騒ぎ出したのでした。
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「はわわぅ……な、なんだかくらくらします」
(ぅ~、なんだろう……もしかしてこれがMP切れって言う状態なのかな?)
「さ、サハラ大丈夫!? 掴まって」
サハラさんがフラついた所へすかさずララが駆け寄り支えてあげます。
「ララ、ありがとうです」
(でも良かった、無事治せたみたいね。 泣いて喜んでる相棒さんの顔を見れば魔力切れの気持ち悪さも何のそのだよね)




