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【禁忌】無限再生、永劫搾取

 ※本エピソードには、一部ショッキングな戦闘描写や残酷な表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。



【※滅:不死と記述されていますが、『永遠に苦しみ続ける』と同義です。深い絶望で埋めて差し上げましょう】



 刹那せつな、魔神ザフィエルの掲げた巨大なランプから、おぞましい紫の煙が噴き出した。


 視界が混濁し、世界が歪む。

 混沌の中で、バルトロメウスは見た。女神エクリチュールさえも筆を止めて見惚みとれる、極上の「皆殺しのプロット」を。



 まず、カイルの首が。

 生存率120%を誇った「絶対的な生」が、軽薄な音と共に千切れ飛ぶ。バルトロメウスはその首を無造作に蹴り転がし、血溜まりの中で絶命する宿敵の姿を、心底愉快そうに踏みにじった。


「ははは! 王の最期がこれか! おい、リリアーヌ! そこからよく見ていろ!」



 次に、ヴィンセント。

 最強騎士筆頭と目されていた若き天才が、バルトロメウスの振るう「朱い筆跡」によって、粉々に砕け散る。心臓を幾千の文字で貫かれたヴィンセントは、一言も許されず、ただの肉の塊へと変えられた。



 そして――リリアーヌだ。

 小賢しい「校閲ガール」が、恐怖に顔を歪め、命乞いをしていずり回る。バルトロメウスは嘲笑あざわらいながら、彼女が大切に抱えていた『千夜一夜物語』をページごと引き裂き、黄金のインクを喉奥へと無理やり注ぎ込む。


「さあ、書き直して見せろよ! 自分の命がここで終わるという、完璧な結末ピリオドをな!」


 リリアーヌが、血とインクを吐いて崩れ落ちる。


 絶望に染まった瞳。


 助けようとした精霊セリナも、魔神ザフィエルも、女神の強大な魔法の前にちりとなって消え去っていく。視界のすべてが朱く染まり、己を称える歓喜の歌だけが響き渡る――。



「……あ、あはははは! 最高だ! 俺の望んだ、一点の曇りもない大団円ハッピーエンドだッ!!」



 勝利の陶酔とうすいに酔いしれ、天を仰いで高笑いするバルトロメウス。


 しかし。笑い声は、紫の煙が風にさらわれると共に、「植物が肉をすする音」にかき消された。



「……え?」



 そこには、死体など一つもなかった。

 カイルも、ヴィンセントも、そしてリリアーヌも。傷一つ負わぬ姿で、冷徹な眼差しをこちらに向けて立っている。


 代わりにバルトロメウスの視界に映ったのは、自分の四肢を、胴体を、内臓までも深く貫き、逃れられぬほどに根を張った巨大魔樹――マンドラゴンのおぞましい触手だった。


「な、なんだこれは……!? 離せ、エクリチュール様の加護が、、、、、、『不死』があるはずだッ!」


「……記述の復元。ええ、確かに機能していますわね。私としては、王道展開すぎて、好みではありませんが……」


 リリアーヌが、手元のペンを冷ややかに走らせる。


「無限に再生する肉体ほど、魔樹の苗床にふさわしいものはありませんわ。どれほど吸い尽くしても、貴方の『不死』が勝手に養分を補充してくれる……。永遠に枯れることのない、最高の供物ですこと」


 バルトロメウスの絶叫が、真の地獄の産声として砂漠に響き渡った。

 望んだ「不死」という二文字は、リリアーヌの校閲によって、死ぬことさえ許されない「永劫の搾取さくしゅ」へと書き換えられたのだ。

 第098話、お読みいただきありがとうございました。

 幻影の中で仲間たちが散っていく凄惨なシーン……描いていて心が痛みましたが、現実に戻った際のカタルシスを大きく感じていただければ幸いです。


 不死身の設定を逆手に取った「永久機関の苗床」。

 文字通り、死ぬまで(死ねませんが)搾取され続ける末路でした。

 次回も、どうぞお楽しみに!

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「悪夢(ユメ)は見れたかよ?」 邪眼の使い手の方の一人の決めセリフです。丁度合っているな~と思ったので(マンガ「奪還屋」より) ……この方の行き先がプレゼント扱いだったらもう一人の邪眼使いの方とも…
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