【滅】『死ねない』という名の地獄をどうぞ
「……しつこい、ネズミ共めが……ッ!」
バルトロメウスが、「文字の鎖」を激しく軋ませた。
ヴィンセントの剣が、唸りを上げてバルトロメウスを正面から強襲する。
あまりに重い一撃。ギルマスが受け流そうと意識を向けた刹那。
バルトロメウスの足元、不自然に伸びた影が揺らぎ、そこからカイルが、爆発的な踏み込みで姿を現した。
「――仕留める」
カイルの瞳が鋭く光る。
逆手に握られた剣が、無防備なバルトロメウスの背中へ、容赦なく突き立てられた。
鈍い音と共に、刃は記述の核たる「心臓の一文字」を深々と貫通する。
「……が、はっ……!?」
カイルの生存率120%という「絶対的な生」を確信した踏み込み。そして、ヴィンセントとの完璧な連携。
誰の目から見ても、確実な「死」を与える一撃だった。
だが。
「……あ……ああ、あははははっ!」
バルトロメウスの口から漏れたのは、苦悶ではなく、狂気を含んだ笑い声。
カイルが剣を引き抜こうとした瞬間、異変が起きる。
背中から溢れ出したのは、煮詰めた朱いインクを思わせる、おぞましい筆跡の群れだ。
傷口を縫い合わせるように、カイルの剣を肉体の一部として飲み込み始めたのだ。
「無駄だよ、カイル陛下! エクリチュール様が記した『注釈』がある限り、俺の肉体は……一文字の欠落さえも許されない!」
頭上に、禍々しい【朱い注釈】が浮かび上がる。
【※注釈:バルトロメウスの肉体は不死であり、記述の復元を優先するものとする】
突き刺したはずの剣が、逆にバルトロメウスの肉体の一部へと変貌していく。
カイルの腕にまで、朱い筆跡が絡みつこうとした時。
「……カイル様! 生存率120%と、不死の肉体の落としどころを見つけましたわ!」
リリアーヌの声が響くと同時に、天に掲げた『千夜一夜物語』から黄金のインクが飛散した。
バルトロメウスの朱い記述を真っ向から拒絶し、カイルとの間に鮮烈な境界線を書き込む。
【※滅:不死と記述されていますが、『永遠に苦しみ続ける』と同義です。深い絶望で埋めて差し上げましょう】
ご覧いただきありがとうございます!
バルトロメウスの「不死」を、リリアーヌ様が残酷な形で再定義しました。
次回もどうぞ、お楽しみに!




