コピペの安息など、ただの『ボツ原稿』のゴミ捨て場ですわ
オアシスの町を目前にして、リリアーヌは立ち尽くしていた。
瞳が黄金の光を放ち、「完璧な風景」を校閲する。
風に揺れるヤシの葉の一枚一枚が、隣の木と一分一秒の狂いもなく、同期して動いていた。
「……気味が悪いですわ。風景の解像度が低すぎます」
リリアーヌが万年筆を抜き放ち、虚空へと掲げた。
刹那、陽炎のように空間が歪み、一人の男が姿を現した。かつて「鉄壁の管理者」と謳われた、ギルドマスター・バルトロメウスだ。
「女神『エクリチュール』様より与えられし、『永遠なる午睡の都 』へ、ようこそ。……さあ、リリアーヌ。ペンを置きなさい」
「ちょっとアンタ、何寝ぼけたこと言ってんのよ!」
精霊セリナが飛び出した。彼女は街路樹を指差し、不快そうに顔を歪める。
「花も木も、精霊の『鼓動』が全く聞こえないわ! 全部、上っ面だけのハリボテじゃない!」
さらに、背後の影が巨大に膨れ上がる。
魔神ザフィエルが、四本の腕を組み、バルトロメウスを威圧した。
『……主よ。我の一振りで、この『短編』ごと粉砕して差し上げましょうか』
「待ちなさい、ザフィエル。……まずは『赤』を入れてからですわ」
リリアーヌは万年筆の先を、「完璧なオアシス」へと突きつけ、巨大なバツ印をつけた。
「女神エクリチュール? 随分と手垢のついた名前ですわね。貴方の言っていることは、校閲者にとって、最大の侮辱ですわ。起承転結のない物語、変化のないキャラクター、そしてコピペで埋め尽くされた背景記述……。ただの『ボツ原稿』のゴミ捨て場ですわ!」
「……女神のプロットを、侮辱するか……!」
バルトロメウスの姿が、黒いインクの霧に包まれ、巨大な「文字の鎖」へと変貌していく。だが、リリアーヌの瞳に迷いはない。
「セリナ、ザフィエル! 偽りの安息を、根こそぎ削除いたしますわよ!」
第095話、最後までお読みいただきありがとうございます!
ギルマス相手でも、リリアーヌ様の瞳は誤字一つ見逃しません。「手抜きプロット」と断じ、偽りの安息(コピペの町)に鋭い赤ペンを突きつける。セリナとザフィエルも加わり、どうデリートしていくのか。
次回も、どうぞお楽しみに!




