【校閲】ジャンル変更につき、雑兵(モブ)は一括削除いたします
黄金の砂漠に両膝を突き、深々と頭を垂れる魔神ザフィエル。
巨躯から放たれる神威だけで、迫りくる異形の軍勢がたじろぎ、吹き荒れていた砂嵐がピタリと止む。
「……蹂躙? 薄汚い魔物如きに、貴方の真価を発揮するおつもり?」
宙に浮かぶ『千夜一夜物語』の表紙を、愛用の万年筆の先でトン、と叩いた。
リチャード様が攻略し、私に託してくださった「原典」。そこには、数多の魂がインクとなって刻まれている。
「物語に綴られた英霊たち……なかでも、とりわけ『整合性』に優れた三人を呼び出しなさい。……『最高の共演者』を選び抜くのです」
「御意。……目覚めよ、我が愛しき『牙』たち。千夜の闇を裂き、主の赤ペンが示す標的を噛み砕け!」
ザフィエルが天を仰ぎ、巨大な四本の腕を広げた。
直後、『千夜一夜物語』のページが猛烈な勢いでめくれ上がり、そこから三筋の黄金の奔流が噴出した。
【※注釈:これより、本作品のジャンルを『恋愛――異世界』から『異世界無双』へと一時的に書き換えます】
砂漠の最前線に着弾したのは――伝説そのものを纏った三人。
「やれやれ、砂漠で戦えとは。……まあいい、リリアーヌ様。この航路、俺の剣で『最短』に書き換えて差し上げよう」
左翼に現れたのは、潮騒の匂いを纏った剣士、七海王シンドバッド。
巨大な曲刀を抜くと、砂漠に「激流の文字列」が物理的な波となって出現する。敵軍を「ただの漂流物」として再定義し、一太刀で数百のモブを物語の表層から押し流していく。
「『開け、ゴマ』……。世界の境界線、許可なく通れると思うなよ」
右翼に現れたのは、無数の宝剣を背負った、盗賊王アリババ。
指を鳴らすと、敵軍の足元から「影」が剥離し、そのまま敵と全く同じ姿をした「黄金の人形」が立ち上がった。
「三つの願い? そんなケチなことは言わないさ。主が『消せ』と書けば、それが俺の魔法だ!」
そして眼前、宙に浮かび上がったのは、青い炎を纏った、若者アラジン。
彼は、私の万年筆から滴る「赤いインク」を指先で受け取った。それを、巨大な青い火龍へと変貌させ、逃げ惑う軍勢を、跡形もなく業火の渦へと呑み込んでいく。
「……壮観ですわね。カイル様、ヴィンセントお兄様。三人に『道』を作らせますわ。……私たちは、品性の欠片もない敵の喉元まで、最短距離で進みましょう」
黄金の万年筆を迷いなく前方へと突き出した。
【※追記:焔は、物語が完結するまで決して絶えることはない】
絶望の砂漠を希望へと塗り替え、圧倒的な蹂躙が幕を開けた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
リリアーヌ様の「※注釈」ひとつで、物語のジャンルが強制的に塗り替えられてしまいました。
甘い「恋愛」要素を期待していた読者の皆様、申し訳ありません。現在、この戦場は『異世界無双』仕様となっております。
「ジャンル変更の瞬間がすごい!」「三人のチート性能に笑ったw」などなど、皆様のご感想をお待ちしております!
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