【校閲】真実を飲み込むお茶会
聖域、疑惑のティーテーブル。
「お母様、はぐらかさないでください!」
リリアーヌが、喉の奥に張り付く声で真相を問いただした。
刹那、エレオノーラの傍らに置かれた、装飾の美しい魔道端末が軽やかな音を鳴り響かせた。
お母様は、娘の切実な視線を柳に風と受け流し、白磁の指先で通話を開始する。
「あら、先生。……やだ、うふふ。相変わらず、お上手ですわね。リリアーヌが先生との仲を怪しみますわ」
耳を疑う、甘い声。
リリアーヌを「転生令嬢」という不穏な言葉で翻弄した直後だというのに、彼女は今、恋人との密会を隠す乙女の顔をしている。
リリアーヌは、差し出した手を空中で止めたまま、言葉を失った。
先ほどの衝撃的な言葉を、「先生」なる人物との仲睦まじい会話が、残酷なまでに「日常」の圏内へと押し流していく。
「ええ、是非お茶でも……。あら、まぁ、それは仕方ありませんわね。……ええ、ありがとうございました」
通話が切れる。
お母様は満足げに端末を置くと、何事もなかったかのように冷めた紅茶に視線を落とした。
「……お母様、どなたですの? それに、先ほどのお話は――」
「あら、リリアーヌ。何のことかしら? ちょっとした冗談が、心に刺さってしまったの? うふふ、可愛い子」
お母様は事も無げに微笑む。前世なんてない。転生なんて、お話の中だけの夢想。そう切り捨てんばかりの軽やかさで。
第088話をお読みいただき、ありがとうございます!
お母様、えげつない……。
真相を「冗談」という霧の中に隠し、娘を翻弄する姿は、どんな敵よりも恐ろしいかもしれません。
そして、電話の向こうでお茶を断った「先生」の真意とは。
次回も、どうぞお楽しみに。




