私があなたを「正解」にする
圧倒的な神力を放つシルヴァーナの前に、三つの影が重なった。
リリアーヌ、カイル、そしてアストレイド公爵。彼らは一歩も引かず、背後にいるセリナを庇うように立ちふさがる。
リリアーヌが、喉を震わせて叫んだ。瞳には、運命という名の誤字を許さない、校閲者としての強い光が宿っている。
「勝手なことを言わないでくださる? 精霊セリナは、誰かの代わりに生きているわけではないですわ! たとえ世界中の誰が否定しても、私が、ここにいるセリナの存在を『正解』だと証明してみせます!」
沈黙が降りた。
次の瞬間、シルヴァーナの肩が震え、彼女はこらえきれずに噴き出した。
「ふふ……っ、あははは! 面白い子。ただ『帰ろう』と言っただけなのに、どういうことなのかしら? 」
シルヴァーナの視線が、リリアーヌからその隣に並ぶ者たちへと移る。冷徹な威圧感にさらされながらも、カイルが静かに、だが確固たる意志を込めて口を開いた。
「……リリアーヌの真っ直ぐな想いが、俺たちの歩むべき道を照らしてくれている。彼女が守ると決めたものを、俺が否定することはない」
アストレイド公爵も、重厚な声を響かせる。
「侯爵としての面子など、この場には不要だ。私は一人の男として、彼女たちの未来を守ると決めた。シルヴァーナとやら、強引な連行はさせん」
その様子を、遥か上空から静かに見守る視線があった。
サクラは、雲の合間からやり取りを覗き込み、小さく、けれど温かく呟く。
「……僕も同じだよ、リリアーヌ。自分の居場所は、誰かに決められるものじゃないって……信じたいな」
シルヴァーナの瞳が、ふと微かに潤んだ。遠い日の記憶に触れたような、どこか寂しげな表情。
【※注釈:……悲しみを知る者】
「私の負けね……いい仲間に恵まれて良かったわね、セリナ。ロウィンの魂の欠片も……今はあなたに預けておくわ」
シルヴァーナはふっと力を抜くと、一陣の風に髪をなびかせて告げた。
「気が変わらないうちに、セリナをしっかり守りなさい、リリアーヌ」
張り詰めていた空気が、わずかに緩む。
背後で守られていたセリナが、震える声で、けれどはっきりと答えた。
「……ありがとう、シルヴァーナ」
その感謝は、かつての親友としてか、それとも――。
第074話をご覧いただきありがとうございます。
「セリナを『正解』だと証明してみせます!」
運命という巨大な原稿を前に、リリアーヌが放った宣戦布告。
誰かに決められた配役ではなく、今ここにいる意志を信じようとする彼女の叫びが、最強のイレギュラー・シルヴァーナをも動かしました。
シルヴァーナが去り際、セリナに託した「その子を守りなさい」という言葉。
まだ「正解」だと決まったわけではないけれど、そうあろうとするリリアーヌを、今度はセリナがどう支えていくのか。
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