【欠落】読み解けぬ外来種(イレギュラー)
黄金の竜巻が吹き荒れ、文字化けした魔物たちが次々と塵に還っていく。
圧倒的な神威を前に、リリアーヌは無意識のうちに万年筆を強く握りしめていた。
(……何者なんですの? この方は)
本能的な警戒心が、リリアーヌに「校閲」を促す。瞳を鋭く光らせ、眼前の銀髪の女性――シルヴァーナへとペン先を向けた。
本来ならば、リリアーヌの視界には対象を定義する「注釈」が浮かび上がるはずだ。
だが。
「――っ!?」
リリアーヌの視界が、真っ赤なエラーメッセージで埋め尽くされた。
【※注釈:シルヴァーナ。種族:ダークエルフ。外部から侵入したイレギュラー。強さ:解析不能(文字化け)。属性:……読めませんわ、この文字!】
リリアーヌの背筋に、かつてない戦慄が走った。
目の前の女性は、この『アンフィニッシュ・ストーリー』という物語の住人ではない。
戦場を蹂躙し終えた黄金粒子が、静かに地へと降り注ぐ。
静寂が訪れた戦場。沈黙を切り裂いたのは、傍らで震える精霊セリナの、悲鳴にも似た掠れた声だった。
『……嘘。……どうしてあなたがここにいるの?』
シルヴァーナがニッコリと微笑んだ。
「久しぶりね、セリナ。あなたのことも、ずっと探していたわ。皆も待っているし、一緒に帰ろう」
第073話をお読みいただきありがとうございます!
ダークエルフ、シルヴァーナ。
リリアーヌの「校閲者の眼」をもってしても【解析不能】と出る彼女は、まさに世界のルールが通用しない規格外の存在でした。
たとえ相手が世界の「外」から来た者であっても、彼女の赤ペンが黙っているはずもありません。
次回も、どうぞお楽しみに!




