表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/87

未来透視(プレビュー)なんて、ただの「下書き」ですわ

『……信じられない。こんなことが起こるなんて』


 四大侯爵が消え去った漆黒しっこくの「空白」に手をかざし、傍らに顕現けんげんした精霊様が唇を震わせていた。彼女がこれほど驚くなど、ただ事ではない。


「精霊様、これは一体……?」


 カイル様が歩を進めて問いかける。


 精霊様は弾かれたように顔を上げた。


『転送魔法よ! 世界に存在しないはずの禁忌きんきの術式……。四大侯爵に権限が与えられるはずがないのに!』


 精霊様の断言に場が凍りつく。ルールの根底を覆す不穏な予兆。


 だが、その静寂を少女の笑い声が破った。


「あはは! さすが精霊セリナ、正解!」


 手のひらサイズの『予言の書』と化したサクラだ。物理法則を無視して宙を飛ぶ姿は、伝説に相応しい異質な存在感を放っていた。


「セリナって……精霊様のお名前?」


「そうさ、リリアーヌ。続きは僕のページにも、『予言』として無理やり表示されちゃうんだ」


 サクラがパチンと指を鳴らす。刹那せつな、彼女の表紙からまばゆい魔力があふれ出し、空中に巨大な画面が描き出された。




 サクラの固有能力『未来透視プレビュー』。




 映し出されたのは、あまりにも壮絶な未来だった。

 異世界へ送られた四大侯爵が、人ならざる軍勢を率いて戻り、王都を蹂躙じゅうりんする――。一分一秒違わぬ、確定した破滅の光景。




「無駄だよ、リリアーヌ。記述はもう消せない。校閲なんて、出来上がった物語の端を突くだけの、無意味な作業なんだから」


 サクラの嘲笑ちょうしょう

 精霊様の絶望。


 カイル様の手が怒りでみしみしと音を立てる。


 だが、私は宙に表示された「魔法の残像」を冷徹な目で見つめ、黄金の万年筆を抜き放った。


「……ふん。随分と誤字脱字の多い、悪趣味な下書き(プロット)ですわね」


「……えっ? 何言ってるの、世界の終わりだよ?」


 サクラが呆気にとられて動きを止める。私は予言の文字列に、ペン先を真っ直ぐ突き立てた。


「確定した未来? よろしいですわ。ですがサクラ様、貴女は忘れていますわね。――表示プレビューできる術式であるならば、『編集の余地』がありますわ」


 不敵に微笑み、魔力をペン先に一点集中させる。


「サクラ様、大人しく全頁を開放なさい。私が根こそぎ書き換えて(リライト)差し上げますわ!」

 第069話をお読みいただき、ありがとうございます!


 ついに精霊様の名前が「セリナ」だと判明しました。


 「転送魔法」という、この世界のルールを壊す禁忌の術式。

 再登場したサクラ様の絶望的な「予言」が場を凍らせます。

 

 けれど、我らがリリアーヌ様にとっては、予言もただの「プレビュー画面」に過ぎないようで……。

 次回も、どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ダメですよ~。こういう時は「一か八かになるけど、やってみる?」とか言わないと(笑) 主人公のこの方ならどんな状況でも「受けて立つ!」のですから♪ 「私のペン先で不可能なんて書かないわ!」くらい言いそ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ