受理した後の余白(プライベート)は、守護騎士様の独占領域(テリトリー)ですの?
帝国の喧騒を遠く離れ、懐かしき公爵邸の私室。
使い慣れた寝椅子に身を預け、最高級の茶葉の香りに包まれる。これこそが、私にとっての「正しい原稿」ですわ。
「……ふう。やはり、自分のテリトリーは落ち着きますわね」
私が呟くと、傍らで静かにお茶を淹れていたカイル様が、ふっと口角を上げた。
彼は今、ゆったりとした部屋着を纏っている。その隙のある姿は、帝国で晒した美貌以上に、心臓に悪い。
「リリアーヌ。……少し、顔が赤い。まだ旅の疲れが抜けていないんじゃないか?」
カイル様が自然な動作で、私の額に手を当ててくる。
「……カイル様。ですから、距離が近すぎると何度も……」
「俺は君の『守護騎士』だ。主の体調管理を怠るわけにはいかないだろう?」
彼は、当然のような顔で隣に腰を下ろした。
帝国での「追記」を経てからというもの、『独占欲』という名の設定値が、明らかに最高記録を更新している。
「……あら。カイル様、その台詞。物語の整合性を取るならば、控えめにするのがマナーではなくて?」
「あいにく、俺の心はもう校閲済みだ。……君に『受理』された時から、遠慮という文字は削除したつもりだが」
さらりと恐ろしいことを仰いながら、カイル様が私の指先に、己の唇を寄せた。
(……おやおや。私邸だというのに、主導権を完全に奪われておりますわ……)
窓の外では、公爵邸の美しい庭園が夕闇に溶けていく。
修正すべき悪役も、暴くべき裏設定(注釈)もない、二人だけの余白の時間。
「……リリアーヌ。今夜は、君が眠りにつくまで隣にいていいか?」
甘い低音に、私は扇子で顔を隠すことすら忘れ、ただ「……好きになさいな」と、消え入る声で答えるのが精一杯でした。
本日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
帝国での大立ち回りを終え、ようやく戻ってきた公爵邸。
しかし、そこで待っていたのは、旅の疲れを癒やす休息……ではなく、カイル様の「独占欲解除」という名の新章(?)でした!
「遠慮という文字は削除した」、リリアーヌ様の決め台詞を甘く使いこなすなんて……カイル様、完全に「攻略側」に回っていますね。
リリアーヌ様も、もはや注釈で誤魔化せないほどの赤面っぷりです(笑)
次回も、どうぞお楽しみに!




