『余白に綴る、二人だけの追記(エピローグ)』
喧騒の残るホールを抜け、テラスへ出ると、帝都の冷ややかな夜風がドレスの裾を揺らした。
背後で扉が閉まった瞬間、あんなに騒がしかった「駄作」の世界が、嘘のように遠のいていく。
カイル様は私の手を離さない。それどころか、指の間に自らの指を深く滑り込ませ、握り直した。
「……ふう。ようやく、視界から不純物が消えましたわね」
私は夜空を見上げ、深く溜息を吐いた。
黄金の万年筆は既に収めたが、高鳴る鼓動までは、まだ書き換えることができない。
「リリアーヌ。……悪かった。俺の過去のせいで、見苦しい頁を読ませてしまった」
カイル様の声は、先ほどまでの氷の冷徹さが消え、ひどく熱を帯びていた。
天空へ続く道で「追記が終わっていない」と囁いた時の、あの熱量。
「あら。物語の不備を正すのが、私の役目ですもの。……それに、カイル様。貴方が『物語の残骸』などではなく、誰よりも美しい『真実の一行』であることを証明できて、満足しておりますのよ」
月光に照らされたカイル様の瞳が、じっと私を射抜いた。
「……君はいつもそうだ。俺がどれほど汚れていても、ペン先一つで、人生を『最高傑作』に書き換える」
カイル様が空いた方の手で、私の頬をそっと撫でる。
指先は、戦場を駆ける騎士の硬さがありながら、羽毛のように優しく、私の肌をなぞった。
「カイル、様……?」
「……続きだ、リリアーヌ。俺の想いの『追記』――まだ、受理してもらっていないんだが?」
カイル様がゆっくりと顔を近づける。
もう、扇子で隠す隙も、注釈で誤魔化す余白も残っていない。
……あら。この展開、私の校閲を、大幅に超えておりますわ……。
夜の帳の下、私たちの影が、一つの完結した物語のように重なり合おうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに来ました、テラスでの二人きりの時間。
ホールであれほど冷酷に「落丁」や「バグ」を切り捨ててきた二人が、夜風の中で綴る「追記」。
カイル様の「俺の想いの追記、まだ受理してもらっていないんだが?」という攻めの姿勢……!
流石のリリアーヌ様も、これには「想定外のプロットですわ!」と赤面するしかありません。
「早く受理してあげて!」「このままハッピーエンドまで読み飛ばしたい!」と思ってくださった方は、ぜひ【評価】や【ブックマーク】で、二人の恋の進展を応援していただけると嬉しいです!
皆様のポイントが、「甘いインク」の濃度をさらに濃くします(笑)
次回も、どうぞお楽しみに!




