表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/212

その亡命、帝国の「規約(プロット)」違反ですわよ

「……貴様、いい加減にしろ! ここはわが神聖ヴォルガ帝国だ。余所者よそものの分際で、この私と『真紅の王妃』を侮辱ぶじょくした罪、その首を跳ねてあがなわせてくれるわ!」


 紅茶まみれのアルフォンスが、ようやく侍従に支えられて立ち上がった。

 怒りで顔を真っ赤に染め、権力を振りかざして叫ぶ。その隣で、イザベラは青ざめた顔で、すがるようにアルフォンスの腕を握りしめていた。


「……処刑、ですの? それは困りましたわ。ですが『黄金仮面』様。この帝国の厳格な法律を、貴方自身が書き換えてしまってもよろしいのかしら?」


「何……?」


 私は優雅に扇子を閉じ、空間を指先でなぞった。

 すると、ホールの天井付近に、巨大な黄金の文字が浮かび上がる。



 帝国の法典――【亡命者受け入れ法:第108条】。


『亡命希望者は、供出した資産が虚偽であった場合、仲介者は全財産没収、亡命者は即座に本国へ送還される』



 その文字が空中に固定された瞬間、イザベラの肩がビクリと跳ねた。


「イザベラ様。貴女は、ご自身が持ち込んだあの宝石箱の中身が、『ただの石ころ』に変わっていることを、誰よりもご存じのはずですわよね?」


「……っ!」


 イザベラは、かつて亡命馬車の窓に浮かび上がった『警告』を思い出したのか、目を見開いて後退あとずさった。

 そう。彼女はあの日、目の前で自分の財宝が無価値な石へと『赤入れ(置換)』されるのを、その目で見ていたのだ。


「あら、殿下には黙っていらしたの? 『帝国へ行けば何とかなる』と、不渡り確実な手形ガラクタを握らせて、彼を共犯者に仕立て上げたのかしら。……なんという残酷なミスリードですこと」


「だ、黙りなさい! あれは、あれは貴女がかけた呪いの幻覚よ! 私の宝石は本物よ!!」


 わめき散らすイザベラ。 しかし、彼女の瞳には「あれは現実だった」という確信と恐怖が張り付いている。

 匿名(仮面)のルールを投げ捨てて、野次を飛ばし始める貴族たち。


「殿下、まさか本当なのですか? 我々の承認も得ず、ガラクタしか持たぬ女を、帝国の保護下に置いたというのですか?」


「ま、待て! そんなはずは……イザベラ、見せろ! 今すぐあの箱を開けて、潔白を証明しろ!」


 アルフォンスが、裏切られた不安に顔を歪め、イザベラの腕を強くつかむ。

 

 すべてを知っているイザベラは、ただ、ガタガタと震えることしかできない。

 彼女の逃げ場は、もうどこにもなかった。


「……さあ、真実のページを開くお時間ですわ。皆様の前で、醜い『設定ミス』を全画面表示フルオープンにいたしましょうか?」

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


 ついに、あの「石ころ」が火を噴きました。

 逃げ場を失い、ガタガタと震えるイザベラ。そして信じていたものに裏切られようとしているアルフォンス……。


 リリアーヌの容赦ない「校閲」の結末を、ぜひ見届けていただければ幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これは、「開けてビックリ!玉手箱♪」というべきかな(笑) さて、「パンドラの箱(笑)」を開けられるのか?希望(というガラス玉)は入っているのか? あ。その前に災厄が出てこないといけないか♪ それと…
あ、これはものすごくピンチですね、イザベラ様。 宝石箱と騙る箱には例の『石ころ』が見えるだけなのに......。 さて、どのような結末になるのか.......? すごく楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ