その醜態、全画面表示(フルオープン)で公示いたしますわ
「やめて……! 来ないで、触らないで頂戴!!」
イザベラは金切声を上げ、アルフォンスの手を叩き落とした。
かつて愛を誓い、国を捨ててまで共に逃げた男を、今は汚物を見るような目で見つめている。
対するアルフォンスも、その裏切りを確信し、顔をどす黒く歪めた。
「イザベラ、貴様……まさか、本当に私を騙していたのか!? 我が帝国を潤すはずの財宝が、すべてガラクタだというのか!!」
「ち、違うわ! あれは……あれは、あの女が……っ!」
イザベラが震える声で、私を指差す。
会場の視線は、もはや優雅な匿名劇を愉しむものではなかった。
一国の元王妃が、帝国皇子の腕の中で無様に喚き散らす。その「設定崩壊」した姿に、貴族たちは露骨な嫌悪感を隠そうともしない。
私は、手にしていた万年筆を優雅に回し、溜息をついた。
「あら。まだ『校閲者』のせいにされるおつもり? 物語の不備を指摘されたからといって、作者が逆上しては救いようがありませんわ」
私は一歩、前へ出る。
カイル様が、歩みに合わせて、威圧的に影を落とした。
「……皆様。物語を汚す『嘘』という名の誤字は、その場で正して差し上げるのが礼儀ですわ。さあ、注釈を展開いたします」
万年筆を一閃させた瞬間――。
パリン、と。
空間が割れる音と共に、ホールの壁という壁、床という床に、巨大な『注釈の窓』が次々と浮かび上がった。
【※全画面表示:亡命者イザベラの真実】
イザベラが自国で贅沢を尽くし、カイルを「欠陥品」と呼び捨て、アルフォンスと密会を重ねていた日々の『記録』が。
そして――。
アルフォンスが隣で寝息を立てる中、彼女が石ころに変わった宝石を掴み、「この男さえ騙し通せば、帝国で贅沢ができる」と鼻で笑った瞬間の映像までもが、残酷なまでの鮮明さで再生された。
「ぎゃあああああああ!! 消して! 今すぐ消しなさい!!」
イザベラは顔を覆い、床に伏して絶叫した。
貴族たちから漏れるのは、もはや嘲笑ですらなく、冷酷な「廃棄」の決定だった。
「……仲介したアルフォンス殿下。貴方は、この『ハリボテ』を帝国に招き入れた。その責任、どう取られるおつもりかしら?」
私の問いかけに、アルフォンスはガタガタと震え、膝をついた。
紅茶にまみれ、誇りを汚された皇子。
そして、すべてを暴かれ、文字通り「裸の王妃」となった女。
「さあ、『名もなき騎士』様。……この『駄作』の幕引き、貴方がなさいますか?」
私は、無言で佇むカイル様に、最後の一筆を委ねた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ついに「全画面表示」です。
悪事がハイビジョンで再生される恐怖……イザベラ様、いいお顔をされていましたね。
そして、バトンはカイル様へ。
彼が「捨てられた息子」として、どのような一筆を加えるのか。
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