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『強制終了(ターミネイト)』――三流の悲劇に、至高の赤を

 アーサーの絶叫が止み、大広間には不気味なほどの静寂が訪れた。彼を嘲笑あざわらっていた貴族たちは、まるで壊れた人形のように同じポーズで固まっている。この「物語のおり」の記述が、アーサーの絶望というノルマを達成し、一時的な「保存セーブ」に入ったのだ。


「……ふふ。お疲れ様ですわ、アーサー様。貴方の演技、なかなかの『読み応え』でしたわよ」


 ヴェロニカ――リリアーヌは、膝をつくアーサーを見下ろした。その手に握られているのは、先ほどまで隠し持っていた黄金の万年筆。


「ヴェ、ヴェロニカ……? 君、は何を……」


「あら、まだその役名で呼びますの? 私、その名前はもう『校閲済み』ですわ」


 リリアーヌが虚空へ向けて、ペンを一閃させる。すると、彼女の着ていた純白のドレスが、文字の飛沫しぶきとなって弾け飛んだ。現れたのは、夜の闇よりも深い真紅のドレス。そして、彼女の周囲を舞うのは、先ほどまで「風景」だった文字の断片たち。


「いい、よく聞きなさい。アーサー様。貴方を裏切ったヴェロニカも、この腐った帝国も、今の貴方の絶望も……すべては、私を閉じ込めるために用意された、質の悪い『プロット』にすぎませんの」


 リリアーヌの背後に、巨大な黄金の文字が浮かび上がる。それは、物語そのものを物理的に圧殺する『削除(DELETE)』の文字。


「……ッ、何なんだ、お前は! 私の世界を、復讐を邪魔するな!」  


 虚空から、ついに「書き手の女」の悲鳴が混じった怒号が響く。


「邪魔? 心外ですわね。私はただ、あまりにも『誤字脱字』が多すぎるこの歴史ページを、正しく整えて差し上げようと思っているだけですわ」


 リリアーヌは、愛おしそうに自分の扇子をでた。


「貴女、私の騎士を文字に分解して、この世界のインクに混ぜるという暴挙に出ましたわね? ……私の逆鱗げきりんに触れたのを、まだ理解していらっしゃらないのかしら」


 リリアーヌが万年筆の先を、空中の一点――隠れている「執筆者」の心臓があるはずの座標へと突きつけた。


「カイル様の欠片が混じったこの世界インク……。一滴残らず、回収させていただきますわ。……一文字でも欠けていたら、貴女の魂をペン先に変えて、私の愚痴ぐちを永遠に書き取らせて差し上げますわよ?」


 リリアーヌの微笑みは、聖女よりも美しく、魔女よりも残酷だった。黄金のインクが螺旋らせんを描き、偽りの王宮を根こそぎ「消去」し始める。


「さあ、添削の時間ですわ。――三流作家さん。貴女の物語、ここで【完結(打ち切り)】とさせていただきます」

 第041話、ご覧いただきありがとうございました!


 ついにリリアーヌ様が「聖女ヴェロニカ」の皮を脱ぎ捨て、本来の目的を剥き出しにしました。


 王子を絶望させるための「婚約破棄」さえも、彼女にとっては物語の書き手を釣り上げるための『餌』にすぎなかった……という、まさに至高の校閲者っぷりです。


「……貴女の魂をペン先に変えて、私の愚痴ぐちを永遠に書き取らせて差し上げますわよ?」


 リリアーヌ様、その言葉、冗談には聞こえません……。


 そして、カイル様の運命は?


 もし「リリアーヌ様、もっとやってください!」と思ってくださった方は、ぜひ評価やブクマで彼女の万年筆にインクを補充してあげてくださいませ。


 次回も、お楽しみに!

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