【※全滅】獣人鳥を飲み込む、古竜の深淵
大地に降り立ったのは、軍団長、孔雀鳥人イプシロン。
鮮やかな極彩色の羽を纏い、身のこなしは貴族令嬢のように優雅だ。
「我らは、エレオノーラ様からの極秘任務を受けている」
マクシミリアンが地団駄を踏んで叫ぶ。
「バウッバウッ! (俺様の見せ場を奪うとは! モフモフの『聖域』なんだぞ!)」
セリナが笑い出した。
「うふふ。可愛いわね。
……でも、今は『見せ場』を共有してあげましょう」
その時だった。
上空の空気が、砕け散るような音を立てて消滅した。
どす黒い次元の裂け目から這い出る影。
漆黒の鱗が陽光をことごとく吸い込み、周囲の気温が氷点下まで下がった。
魔導大陸の三大竜が一角、『星読みの蒼穹竜』。
『……蠅ごときが騒がしいな。
貴様らのような下等な『書き込み』に、魔導の空を汚す権利などあるか?
星の巡りは既に、お前たちの埋葬地を告げている。
……安心しろ。貴様らの死に際は、数千年前の星図に寸分違わず刻まれている。
運命という名の脚本に、貴様らのような端役がアドリブを入れる余地などない』
古竜の傲慢な声が、脳髄に響く。
瞳には、星の巡りが綴る「滅びの預言」が冷酷なまでに映っていた。
イプシロンは震える指先を制し、軍団長として全軍に号令をかける。
「――刮目せよ。大空の譜、我ら『天翼』の極彩色で塗り潰せ!」
戦場は地獄と化した。
古竜が一度息を吐くだけで、空間ごと圧縮され、獣人鳥たちの美しい翼が、抗う間もなく飲み込まれていく。
「くっ、フォーメーションを崩すな!」
イプシロンの叫びも空しく、古竜の放つ不可視の衝撃波が、獣人鳥たちを直撃した。
パタパタと、獣人の姿を維持できず、ただの無力な小鳥へと姿を変えて墜落していく。
翼を折られ、鮮血を散らして煙の中へと消える者たち。
軍団の半数が一瞬にして壊滅した。
「……エレオノーラ様の命、完遂ならず……か」
イプシロンが膝をつき、最後の一撃を受けようとした瞬間――。
重力を嘲笑うかのような速度で、天を裂き、大地を威圧し、迫りくる
――彗星。
否、それは、滅びをも燃やし尽くす、フェニックスの軌跡だった。
星読みの竜が描いた「滅びの線条」を、炎の一閃が引き裂いていく。
「フェニックス……!? ま……まさか……メルヴィル伯爵!?」
ミーニャが茂みの奥から、震える声で空を焼く巨大な火球を見上げる。
蒼穹竜の「運命」を燃やし尽くす、反撃の狼煙だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
飼い主であるメルヴィル伯爵の姿を認め、ミーニャが声を上げました。
古竜の圧倒的な『星の導き』に対し、ついに不死鳥の炎が牙を剥きます。




