【※注釈】魔導港は『文字化け』中につき、愛犬は下着を被って疾走します
ステラリア王国を出発した夜行魔導船が、ついに魔導大陸の港へと接岸した。
しかし、海面を埋め尽くすのは無数の「文字」の残骸。
地面を這うのは「誤字」の濁流。
「ひどい惨状ですわね……。
無名作家の雑な手記で埋め尽くされているみたい」
セリナが虚空に指を走らせると、文字の奔流を解読するように、淡い光の注釈が浮かび上がる。
【注釈:魔導大陸・港湾地区】
※現在、港の設定が『大規模な校閲』により書き換え処理中。
※地形のテクスチャが『文字化け』し、再構築まで立ち入り禁止。
※生存者のプロットは、すべて『空白』へと強制移動させられました。
「……私たちまで物語の背景に溶かされてしまいますわ」
セリナが困惑する中、突如として船の甲板に奇妙な影が飛び込んできた。
リリアーヌの残り香を求めて暴走する、一匹の毛玉――マクシミリアン。
リリアーヌの聖域を頭からすっぽりとかぶり、狂ったように吠えている。
「バウバウ! バウウウ! (リリアーヌはあっちの区画に向かったぞ! ……この布、いい香りがするけれど前が全く見えない!)」
セリナは呆れ半分に溜息をつき、注釈の光をさらに強く輝かせた。
お読みいただきありがとうございます。
魔導大陸に到着したと思ったら、港が文字化けで大惨事……!
でも、我が道を突き進むマクシミリアンの「鼻」だけは、どんな校閲よりも正確だったようです。




