【※検閲】公務明けの侵入、令嬢の休息を妨げる者なし
魔導大陸東岸。
将軍シュナイゼルの撤退後、戦場に静寂が戻った。
極限の緊張状態を維持していた一行。
だが、リリアーヌは扇子でパタパタと空気を仰ぎ、何事もなかったかのように口を開いた。
「公務の時間は終わりですわ。
ゲシュタルトの宿場町でゆっくりしますわよ」
あまりの呑気さに、仲間たちの反応は五人五様だ。
ゴーレム使いのダルタニアスは、頬を紅潮させて歓喜の声を上げる。
「リリアーヌ様、潔いお言葉! 一生ついていきますぅ!」
聖騎士テクニシアンは、深々と溜息をついて武器を収めた。
「……正気ですか。敵地ですよ。
ですが、貴女が決めたなら……仕方ありませんね」
コレットは、母の背中を頼もしげに見つめつつ、警戒を怠らない。
黒い仮面のアンノウンは、相変わらず不敵な笑みを浮かべていた。
そして、存在感のない女、ナナシは、音もなく続いている。
一行は、ゲシュタルトの国境近くにある宿場町へと歩を進めた。
魔導技術の結晶がもたらす繁栄と、裏社会の毒が混ざり合う、甘く危険な場所。
リリアーヌは、散歩を楽しむ貴婦人のように、軽やかな足取りで敵国の門をくぐっていく。
(……この町なら、必要な情報が手に入るはず)
コレットは心の中で呟き、朱マスクの下で神経を研ぎ澄ませた。
第215話をお読みいただき、ありがとうございます!
激闘を終え、リリアーヌ一行は敵地の宿場町へ。
常に先を行くリリアーヌの余裕に、仲間たちも翻弄されつつあります。




