【※検閲】神の気まぐれ、あるいは最高傑作への観劇
コレットが去ったあと、闇市の老婆は姿を揺らめかせ、皺だらけの仮面を脱ぎ捨てた。
現れたのは、浮世離れした優雅な執事。
――リチャード。
水晶玉の破片を指先で弄び、満足げに笑う。
「やれやれ。老婆の姿は腰が痛くていけませんね。
……ですが、覚悟を見届けるには、必要な演出だったでしょう?」
暗闇の中に溶け込んでいた「時空管理官」が、無機質な声で淡々と返す。
「禁書に指定するよりも、コレット本人に返して正解です」
その言葉は、何億通りものシミュレーションの結果を告げるデータベースのようだった。
「水晶の未来予測でも同様の結果です。
リリアーヌの物語を最高傑作へ導くための、最短ルートだと算出されています」
正論そのものだった。
コレットの強靭な精神力は、試すまでもなく実証されていたのだから。
リチャードは、ニヤリと少年のように悪戯っぽく笑みを深める。
「今後も禁書指定を行い、正当な持ち主に渡しましょうか」
闇市の喧騒へ向かって、ゆっくりと視線を投げる。
「コレットが選んだ『ママへの愛』を、横から覗き見したかったのですよ。
作り手というものは、晴れ舞台を特等席で眺めたいものですからね」
「……非効率的です」
「物語の醍醐味です。……さて」
リチャードはパチン、と指を鳴らす。
すると、扉が消え去り、闇市の猥雑な路地が姿を現した。
「コレットは動き出しました。
禁書に書き加える『新たな修正』が、腐ったゲシュタルトにどのような災厄をもたらすか。
……高みの見物ですね」
リチャードが踏み出した先は――。
神の気まぐれという舞台装置は、次の幕へと駒を進める。
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リチャード、老婆に変装していた説!
しかもコレットの成長を特等席で眺めたいようです。




