【※撤収】悪役令嬢ごっこ? ――いいえ、華麗にトンズラするための三流芝居です
ふう。
正直、アホな貴族の相手は疲れる。
私は、『朱マスクの女』を演じ切ることにした。
視線をスライドさせ、空中に浮かぶ半透明のウィンドウを開く。
スキル構成の確認は一瞬だ。
全身から、どす黒く煮詰めたような魔力を解放する。
禁忌の術式――『悪魔の校正』。
禍々しい魔力が会場を覆い尽くし、空気が悲鳴を上げる。
魔導衛兵たちが慌てて駆け寄り、一斉に『マジック・キャンセル』を詠唱した。
「ダメです、弾かれます!」
「バカな、特級相当の魔法だぞ? そんなはずは――っ!」
会場内の貴族たちは、魔力の奔流に悲鳴を上げて逃げ出した。
「覚えておけ、貴様たちを絶対に許さない! ゲシュタルトに災いを振りまいてやる!」
お決まりのテンプレートを並べて、三流断罪シーンを演じ切ると、懐から取り出した転送石を掲げた。
陳腐な悪役ごっこはここまで。
さて、ママ……じゃなかった……リリアーヌと自然に合流しなければ。
――正体を明かすことは、『破滅へのトリガー』だ。
空間が歪み、私の姿は夜の闇へと溶けていく。
残されたのは、怯えきった貴族たちと、いずれ黄金の万年筆の主が踏み入れるであろう、無惨な舞台だけだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
要求通りの「悪役」をコスプレ感覚(?)で演じきって、華麗にトンズラするという……。




