【※シナリオ検閲】朱マスクの忌み子、婚約破棄を享受する
「婚約破棄だ!
穢れた肌に刻まれた『魔道刻印』……。
忌み子であると知ってから、夜も眠れなかった。
お前が、我が家に嫁ぐなど言語道断だ!」
魔道大国ゲシュタルト、王宮のきらびやかな舞踏会。
若き伯爵・アルベールの宣告が、会場の空気を凍りつかせた。
「……承知いたしましたわ。
破棄の申し出、喜んで受諾いたしますわ」
朱いマスク越しに、表情の消えた声で告げた。
私――コレットは、会場の冷ややかな視線を一身に受けていた。
「街を歩くだけで呪われるぞ!」
「全身が呪印に侵されているなんて……汚らわしい!」
取り巻きの貴族たちが投げつける嘲笑と、蔑みの言葉。
転生後の私は、没落貴族の令嬢。
今回の婚約破棄は、運命が課した通過儀礼だ。
「貴様の醜い呪いを、民衆の前でさらけ出せ!」
アルベールが、私の朱マスクを強引に引き剥がす。
露わになったのは噂からは程遠い、陶磁器のように白く、凛とした美貌だった。
会場に、吐息のような静寂が広がる。
だが、それも一瞬のことだった。
「……まやかしだ!
魔法で偽装しているに違いない!」
アルベールは動揺を隠すように叫ぶと、短剣を引き抜いた。
聖女を自称する女が、扇子で口元を隠して、冷ややかに囁く。
「ええ、そうですわ。
刻印こそが、国の理を乱す証拠。
……皆様、今すぐに『忌み子』を排除しなければ、大国は途絶えてしまいますわ」
貴族の視線が、再び「恐怖」の色を帯び始める。
――知っていた。
結局、世界は『悲劇』という名の、都合のいい筋書きを求めている。
私は落ちたマスクをゆっくりと拾い上げ、再び顔を覆う。
――隠しているのではない。
モブの視線に晒されるのは、無意味なことだから。
「……私の美しさを恐れる必要はありませんわ、アルベール様」
胸元の魔道刻印が輝くと、指の隙間から、インクのような漆黒の魔力が滴り落ちる。
「貴方様が愛しているのは……『頭の中』にある、欲望という台本だけですから」
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
婚約破棄から始まる、朱マスクの女の「修正劇」。
次回も、どうぞお楽しみに!




