ご招待ありがとうございます。裏切りプロットは即座に添削しますわ
魔道大国ゲシュタルトから届いた、危機を訴える緊急通信。
国家間の正式な要請として受け、ステラリア王国は協議を重ねた。
「リリアーヌを、あんな不穏な国へ行かせられるか!」
カイルが猛反対するが――。
「ゲシュタルトのプロットは、すでに校閲済みですわ」
エレオノーラが押しきって、リリアーヌと五人の直属騎士を、使節団として現地へ派遣することを決定した。
なお、五人目は「有給で休んでいる」ため、今回は四人での出撃である。
――しかし。
舞台となった大陸東の港。
ゲシュタルトが用意していたのは、あまりにも浅ましい罠だった。
「おお、リリアーヌ殿!
よくぞステラリアの精鋭を率いて、駆けつけてくれた!」
出迎えたゲシュタルトの将軍は、殊勝な態度でリリアーヌを歓迎してみせる。
だが、リリアーヌには、頭上に浮かぶ無慈悲な【真実】がしっかりと見えていた。
【※注釈:本当に来おったわ、ステラリアの無能令嬢め。
まずは黒インクの相手をさせて消耗させ、泥仕合になったところを、後ろから魔導兵団で一網打尽にしてくれるわ!】
(……ふふ。
緊急要請で呼び出しておいて、後ろから刺す『おかわり』のプロットを用意しているなんて。
本当に、どこまでも腐った国ですわね)
リリアーヌは扇子で口元を隠し、冷ややかな視線を向けた。
全てはお見通し。
敵のプロットが歪んでいるのなら、直接赤ペンを入れに行くだけ。
「ええ、ゲシュタルトの皆様のため、尽力いたしますわ」
敢えて罠に飛び込むリリアーヌ。
四人の直属騎士は、危機を察知して、武器に手をかけた。
「リリアーヌ様ぁ!
将軍の首、今すぐ物理的に校閲してよろしいですか!?
ああ、その後で俺を罵倒して、更地に埋めてください……ッ!」
ゴーレム使いのダルタニアスが、快感に頬を染めて、拳を鳴らす。
「……汚らわしい。
カイル陛下が愛するリリアーヌ様を陥れるなんて、万死に値するノイズです」
美しき聖騎士テクニシアンが、滝のようなよだれを拭いもせず、聖剣を抜く。
朱マスクの女は無言のまま、不敵な笑みを浮かべている。
そして、黒い仮面の男――アンノウンが、やれやれと肩をすくめた。
「背後から一網打尽だなんて、物語としては三流の展開だね。
プロットの書き換えが必要かな」
リリアーヌは頭を抱えた。
「私の決め台詞を先に言われてしまうと、何も話すことがありませんわ。
……まあ、いいでしょう」
リリアーヌはすっと扇子を収め、黄金に輝く万年筆を、敵の将軍へと向けた。
「――笑わせないで下さる?
貴方に本当の地獄を見せて差し上げますわ!」
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
カイル陛下の猛反対を押し切ってやってきた、魔道大国ゲシュタルト。
待ち受けていたのはゲスな『挟み撃ちの罠』でしたが、リリアーヌ様にとって、大国の浅知恵などお笑い草に過ぎませんでした。




