暗殺者が更地で土木作業? ――裏切り者の注釈は、今日も絶望に染まる
ステラリア王宮、戦略会議室。
命運を握る「本物の猛者」たちが集結していた。
円卓を囲むのは、カイル陛下を筆頭に、「軍務大臣」アストレイド公爵、「総括プロデューサー」エレオノーラ、「近衛騎士団長」ヴィンセント。
そして、「予言書」サクラと「精霊」セリナが鎮座し、リリアーヌの足元には、「序列二位」マクシミリアンも控えている。
沈黙を破ったのは、財務大臣が震える手で掲げた報告書だった。
「謎の組織『ナニワ商会』より、国家予算十年分に相当する無利子貸し付けを受けることに成功しました!
……『冷凍物流事業』が、大陸全土で爆発的な利益を上げております!」
会議室に、どよめきが走る。
だが、その中で一人、顔を引きつらせる男がいた。
「宰相」エドワルド二世である。
「おお……なんと素晴らしい……。
カイル陛下の御威光、そしてリリアーヌ様の英知の賜物ですな、ウンウン」
だが、頭上には、容赦なく【※注釈】が浮かび上がっている。
【※注釈:計算が合わん……! なぜこれほどの大金が動く!?
ドケチなナニワ商人を、どう抱き込んだのだ……!
妨害工作に投じた金が、すべて無駄になったではないか!】
リリアーヌは扇子で口元を隠し、そっと視線を逸らした。
カイル陛下にいたっては、注釈を読み飛ばし、淡々と外務大臣に発言を促す。
「……周辺諸国の反応は?」
「はっ! ドラフティア国王より『ステラリアの保冷技術の共有を求む。相応の礼を尽くす』との親書が。
さらに神聖ヴォルガ・イグナシオ連合帝国からも、友好の打診が届いております」
外務大臣が続ける。
「しかし不穏な報せもございます。
……西の大陸の一部が『物語』の手に落ち、大地が真っ黒なインクに飲み込まれました。
これを受け、魔道大国ゲシュタルトより『力を貸してほしい』との緊急通信が入っております」
カイル陛下が鼻で笑う。
「現金なものだ。
我が国を飲み込もうと画策していたのに」
エレオノーラが不敵に微笑んで、扇子をパチンと閉じた。
「各国のスパイが騎士団に紛れ込んでおりますが、案ずることはありません。
あえて『誤情報』をつかませて逆利用しております。
……ああ、それから。
リリアーヌの誘拐を目論んだ鼠が入り込んだのですが、事前に対策済みですわ」
カイル陛下の瞳が、凍りつく冷徹さを帯びた。
「……リリアーヌに、手を出そうとしたのか?」
「ご安心ください、カイル様。
彼らは更地で、『芸術的な瓦礫の積み方』を叩き込まれていますわ」
リリアーヌが微笑むと、エドワルドの脂汗が止まらなくなる。
「エドワルド宰相。顔色が優れませんわね?
……何か、計画通りにいかないことでも?」
「い、いえ! まさか!
ただ、我が国の爆速の復興ぶりに、打ち震えているだけでございます!」
【※注釈:嘘だ……全部嘘だ……!
手配した闇の末裔たちが、なぜ更地で土木作業に従事しているのだ!?
この国の人間の思考回路は、一体どうなっている……!?】
エドワルドの絶望的な注釈が、真っ赤に染まる。
そして、会議は「国営ギルドシステム」の本格稼働へと突き進んでいくのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
宰相エドワルド様、「注釈」で、情報と本音がダダ漏れです(笑)
本人は必死にポーカーフェイスを決めているつもりですが、リリアーヌたちからすれば「字幕付きの三流芝居」を見せられているようなものですね。




